長句(短歌・狂歌)旅行編その2
上流の 安家川から 岩泉 紛らわしいな 陸中町村(安家渓谷) 日本の自然1
安家洞 何処にあっか 知らぬけど 訪ねてびっくり 日本最長(安家洞)
神殿の 鍾乳石は 下からも 二億年から 自由に成長(同上)
秋田には 登山道なき 山多く 栗駒以北 大薊山も(桑原山塊)
湯尻沢 上流にある 大湯滝 日本屈指の 天然の風呂(川原毛地獄)
川原毛は 日本三大 霊場で 地獄の下に 三途の川が(同上)
城ヶ倉 八甲田山の 渓谷で 柱状節理に 紅葉色づき(城ヶ倉渓谷)
渓谷の 上に架かる 大橋は 日本一の アーチ橋とか(同上)
奥入瀬の 支流のひとつ 蔦川は 八甲田山の 梓川かな(蔦川)
色づいた 八甲田山を 訪ねれば 初雪降りて 家路を急ぐ(八甲田山)
硫黄岳 睡蓮沼に 顔映し 石倉岳と 見合いをしたり(同上)
ブナ林の 蔦七沼は 成因は 赤倉岳の 噴火と聞きし(蔦沼)
未だ見ぬ 山々もあり 八甲田 南に連なる マイナー九座(長沼)
桂月は 全国各地 知り尽くし 蔦温泉を 終の宿とし(同上)
研究路 カメラウーマン 立ち並び 同時シャッター 鳥を撮りしか(蔦沼自然観察路)
蔦川の 通天橋と 砂防提 土木建造 絵になる眺め(蔦川)
砂防提 数段重ね 水流を 制御ている 様子に見える(同上)
桂月の 言葉を借りて こなくても 歩いて知るや 奥入瀬の四季(奥入瀬渓流)
奥入瀬の 流れに沿いて 三里半 歩けば見ゆる 日本の美景(同上)
日の本のや 四季錦繍の 風情あり 雪の奥入瀬 月の上高地(同上)
いつまでも 歩いてみたき 奥入瀬の 草木に宿る 我が春の春(同上)
旅ありて 命を保つ 歌もあり 野山を一人 彷徨えばこと(同上)
さりげなく 転がる石は 苔むして 奥入瀬渓流 ブランドとなり(同上)
この道と 共に流れる 川あれば 我が身と共に 泳ぐ魚あり(同上)
和賀峡や 案内板は 目にすれど 近寄り難く この日は長く(和賀峡)
和賀川は ダムの前後に 奇勝あり 名前すらなく 人に知られず(同上)
遊歩道 あればと思う 和賀峡は 忘れ去られた 和賀の松島(同上)
湖に 自然と濾過した 上水が 再び流れ 和賀峡となる(同上)
横手にて 鳥海山を 眺めれば 田植え終えても 雪景色なり(鳥海山遠望)
湯に憩い 自然の恵み 感受する 銀山温泉 白銀の滝(銀山川)
新緑に 白銀の滝 同化せず ひたすら白く 落ちるては止まず(同上) 日本の自然2
泥湯から 川原毛地獄の 山並みが 一番好きな 紅葉景観(泥湯温泉)
須川岳 昇る朝日に 湯の煙り 山鳥一羽 落葉に舞う(栗駒山周辺)
咲くむ花も 染まる紅葉も 恋しかり 心浮き立ち 渓谷を踏む(抱返り渓谷)
上流の 調整池の 畔には 一軒宿の 夏瀬温泉(同上)
やや白き 川原の小石 広々と 谷間に憩い 醸し出すかな(同上)
秋田杉 不釣り合いなり 渓谷に 元の姿に 戻すのも保護(同上)
玉川の 酸性水は 中和され 抱返りにて 温和となりぬ(同上)
稲刈りを 終えて一息 冬までは 鳥海山も 笑顔を見せし(鳥海山遠望)
風流や 自然の理 悟りけり 六感冴えて 旅も深まり(松島)
見渡せば 松の緑 細やかに カモメ飛び交う 松の島数(同上)
伝説の オナメモトメの 悲話聞くと 思わず手を 合わせ見るかな(御生掛自然研究路)
四季ありて 喜怒哀楽が 大自然 自然に寄りて 自然を恐れず(同上)
ツツジ咲き いよいよ春は 高まって うきうきしたり 春を思わば(八幡平大沼)
山小屋の ランプの匂い 懐かしく ああ山に来し 思いつのれり(同上)
鮮やかな コバイケソウの 大乱舞 八幡平の 大沼歩道(同上)
地図になき 八幡平の 泥火山 危険防止で 公表をせず(同上)
ありふれた 暮らしに覚めて 夢に見る 山野をめぐる 我が姿かな(藤七温泉附近)
岩手山 八幡平と 比べると 残雪がなく 際立てあり(同上)
湯田町の 南本内 流域は 焼石岳の 最後の秘境(南本内川)
あちこちに 白糸の滝は あるけれど 花山村の 滝は中規模(花山白糸の滝)
上流に 小滝が数段 流れ落ち そうめんの滝と 名付けてみたり(同上)
赤松の 枝ぶり見事な 鳴子峡 秋の紅葉 待つまでもなく(鳴子峡)
鳴子峡 水は濁りて 遠望す 近寄り難き 盆休みかな(同上)
秋保にて ホテル佐勘に 投宿す 三万円の 滝見となりて(秋保大滝)
赤滝や ダムに消ゆる 滝と知り 哀れに思う 自然景観(成瀬川赤滝)
落葉踏み 辿る山路に 絶句せし 偉大なるかな ふるさとの山(栗駒山)
兜山 低山なから 絶壁も 未知なる山の 秋景色なり(湯沢兜山)
名瀑に 選ばれないのが 不思議なり 滑津大滝 比類なきかな(滑津大滝) 日本の自然3
奈曽の滝 百名瀑で ない滝も 他に誇れる 国の名勝(奈曽の白滝)
ぼんやりと 遠く過ぎゆく 思い出を 眼下に望む 北上の夜(男山展望台)
新緑は 見向きもされぬ 真昼岳 紅葉時期の 善知鳥は別格(善知鳥渓谷)
紅葉は 秋田岩手の 県境 真昼ラインは 二十キロ続く(真昼岳林道)
峠には 沢内村の 集落が 遥か彼方の 雲海の下(同上)
小川には 薄緑色の 木もありて 新緑紅葉 合わせ見るかな(同上)
山深き 真昼岳の 裾野には 錦の絵画 果てなく続く(同上)
岩手から ハッキリ見える 焼石が 表の顔と 仰ぎ見るかな(焼石連峰)
残雪の 焼石岳は 形よく 栗駒同様 奥羽の雄姿(同上)
夏油川 石灰華は 特天記 関心薄き 温泉客は(夏油温泉)
峡谷の 狭き空にも 白雲が 流れ行くなり 露天の上を(同上)
和賀川の 支流の秘境 滝めぐり 女神山には 白糸の滝(女神山七滝)
フェリーにて 平館海峡 横断し 脇野沢へと 初上陸す(平館海峡)
岩手山 八幡平の 友なれば 挨拶すると 微笑み返す(八幡平)
ふり向けば 雨と濃霧の 只中を 駆け巡りたり 今日の一日(同上)
出羽富士は 横手盆地の 眺めにて 私どもは 羽後富士と呼ぶ(鳥海山遠望)
吊り橋や 庭園もある 公園で 心休まる 法体の滝(法体滝)
太平山 横手盆地の 南端で 茶屋などありて 見晴らし抜群(太平山展望台)
果たさんと 思いしことも 夢の夢 鳥海山に 沈む夕暮れ(鳥海山遠望)
処理場の 噴煙上り 絵にもなる 鳥海山の 秋の夕暮れ(同上)
雌滝や 十九メートル 直瀑し 最初に出会う 布引の顔(布引渓谷)
堰堤に ブロック造の 建屋あり 大正初期の 取水施設かな(同上)
雄滝や 五段落ちして 滝壺へ 布引五滝 最大の滝(同上)
絶景や 北上川の 春景色 柵の瀬橋に 栗駒の山(栗駒山遠望)
三厩や 義経渡道の 石碑あり 義経伝説 未知なる旅へ(源義経渡道之地) 記念碑1
清盛の 供養塔あり 能福寺 鎌倉中期の 建立と聞く(平清盛供養塔)
通法寺 江戸の中期の 中興で 山門残し 廃寺になりしと(通法寺跡)
皇室の 墓所でもありし 泉涌寺 廃仏毀釈後 宮内庁管理(泉涌寺)
浴場で 討たれし義朝 無念かな その恨みをば 頼朝果たす(野間大坊)
三成の 斬首に思う 潔さ 役者揃いの 関ヶ原かな(石田三成生誕地)
剣客の 死は哀れかな 又右衛門 異国の空に 露と消えしを(荒木又右衛門生誕地)
西行の 墓地を探した 業績は 語り継がれる 似雲上人(弘川寺)
日吉丸 中村生まれで 六十二 太閤として 伏見に死する(豊臣秀吉誕生地)
戦国の 利家とまつ 立派なり 今も変わらぬ 夫婦の鑑(前田家墓地)
バカ殿を 演じた二代 利常が 百万石を 盤石にせし(同上)
朝倉の 最後の当主 義景は チャンスを逃し 大野で自刃(朝倉義景墓)
実盛の 首洗池に 見る涙 木曽義仲に 松尾芭蕉と(篠原古戦場)
月浦を 八大龍王に 護られて 出港したり サンファン号は(石巻月浦港)
政宗の 野望を秘めた 帆船は 建造されて 遥かローマへ(同上)
常長は 任務を遂げて 戻るとも 世の中変り 空しく死なん(同上)
霊屋に 父利直の 寵愛を 眺める如し 桃山の華美(南部利康霊屋)
伝説の 錦木塚は 雪に消え 哀れを誘う 恋物語(錦木塚)
大正期 横荘線は 開通す 横手沼館 十五キロ間(横手駅ホーム跡) 羽後交通横荘線他
樋ノ口に 駅の面影 失せれども 松の並木は 昔のままに(樋ノ口駅跡)
駅跡は 記憶の隅に 残るだけ 平高消えて 平中となり(東浅舞駅跡)
線路跡 拡幅されて 農道に 電柱もなき 田んぼのままに(同上)
駅前は 住宅二軒 建った後 更地になりて 三十余年(浅舞駅跡)
浅舞の 駅前過ぎて 沼館へ 一直線に 拡張されし(浅舞・豊前間)
その昔 線路ありしと 知る者は 五十を過ぎた 人ばかりかな(豊前・里見間)
農協が 再開発した 里見駅 駅の面影 何処にも見えず(里見駅跡)
駅前の 閑散とした 様子から 往時を偲ぶ 気配も見えず(里見駅前跡)
昔より 火の見櫓が あったかは 思い出せない 沼館駅よ(沼館駅跡)
駅前に 商店残る 沼館は 何もないない 浅舞よりまし(沼館駅前跡)
船沼の 停留所跡の 豚舎かな 昔ながらの 田園のまま(船沼停留所跡)
標柱が 名残を留める 館合の 駅舎の跡は 農協となり(舘合駅跡)
大森の 八沢木駅は 闇の中 標柱もなく 悲しむばかり(八沢木駅跡)
横荘線 追憶の旅 二井山で 終りとなりて ただ嘆くかな(二井山駅跡)
雪の白 チューリップの 赤黄色 桜のピンク 草地の緑(浅舞公園)
その昔 ぼんぼり掲げ 祭りした 浅舞公園 桜滅びず(同上)
鐘楼に 模擬天守閣 横手川 桜の花に 野暮な杉林(横手八景・蛇の崎橋)
横手では 一番人気の 観光地 ふるさと村に 春は来にけり(横手八景・秋田ふるさと村)
日本史に 後三年の役 残るかな 記念を印す 公園もでき(横手八景・平安の風渡る公園)
本丸や 広場のままで 九百年 金沢柵は 幻の城(横手八景・金沢公園)
横浜や 東京に次ぐ 大都会 必ず歩く 山下埠頭(横浜) 観光名所1
浜風は 異国の香り 漂わせ 港横浜 われ珍しき(同上)
長崎の 国宝と言えば 天主堂 城郭でない 特徴ありき(長崎)
長崎や 住まねば見えぬ 奥深さ 四季折々の 島の姿も(同上)
訪ねたい 名所ばかり 多すぎて グラバー園は 上位にランク(同上)
重文の 洋館住宅 オルト邸 百二十年の 築には見えず(同上)
長崎は 石橋多く 建ち並び 中島川は 石だらけかな(長崎)
環濠に 囲まれている 吉野ヶ里 最古の城は 弥生集落(吉野ヶ里遺跡)
弥生期の 最大規模の 遺跡なり まだまだ続く 新たな出土(同上)
江戸初期は 七千坪の 集景亭 今は旅館の 柳川御花(松濤園)
最強の 立花宗茂 領主なり 清正・義弘 一目を置く(同上)
熊本や 城は加藤が 終えていて 成趣園など 細川による(熊本)
九州の 大庭園の 双璧は 仙厳園と 成趣園かな(同上)
名に聞きし 太宰府政庁 訪ねれば 復元されし 建物もなく(太宰府跡)
函館は 寺社が少なく 教会の 尖塔眺める 聖堂めぐり(函館)
教会は 外観のみの 見物で 信者にあらず ミサは遠慮す(同上)
聖堂は 白と緑の ピザンティン 美しくかな 国の重文(同上)
函館の 公会堂は コロニアル 元町通りの シンボルかな(同上)
潮香る 北の浜辺は 恋しかり 潮嗅ぎたくて また汽車に乗る(同上)
珍しき レンガ土蔵の 二階建て 太刀川店舗は 国の重文(同上)
函館や 三大夜景 五稜郭 湯川温泉 啄木の墓(同上)
今日もまた 鳥は鳴くなり 閑古鳥 風雅の茶屋は 滅びもせずに(同上)
大阪も 高層ビルが 建ち並び 大阪城も 見えにくくなる(大阪城天守閣)
城外の 景観変り 移るけど 城内だは 進歩もせずに(同上)
大阪も 奈良にも並ぶ 古都なのに 関心ないのか 史跡のままに(難波宮跡)
ただ広く 東京ドーム 二個分が 活用されず 法円坂に(同上)
大阪の 難波宮の 復興が 未来に続く 創めなりしか(同上)
貧しみは 貧しさの果てに 輝ける 石川啄木 尽きぬ情熱(啄木新婚の家)
寅さんが 現れそうな 上の橋 岩手盛岡 中津川かな(盛岡)
三ッ石はに 鬼の手形と 称されて 岩手の名の 創めとも聞く(同上)
石仏の 十六羅漢に 五智如来 廃寺なりしも 市の文化財(同上)
中村家 江戸末期頃の 建築で 国の重文 商家住宅(旧中村家住宅)
南部氏の 別邸庭園 御薬園 聖風閣も 移築されしと(旧南部氏別邸庭園)
造園は 長岡安平の 作とされ 大正ロマンの 雰囲気もあり(同上)
維新後は 伯爵となる 南部氏の 主屋の玄関 慎ましきかな(同上)
原敬 遺愛の茶室 白芳庵 軒の新緑 また新たなり(同上)
待ちわびた 石割桜 見るまでは 退院したき 願いは一つ(盛岡地方裁判所) 観光名所2
盛美園 明治の作庭 武学流 津軽独自の 名主庭園(盛美園)
盛美館 和洋折衷 二階建て 明治の風を 津軽へ運び(同上)
刈り込みを 島に例えて 洲は海に 池泉回遊 国の名勝(同上)
池泉には 中島築き 土橋架け 雪見灯篭 白洲の入江(同上)
清藤氏 本邸庭園 盛秀園 非公開にて 解説を読む(盛秀園)
本邸は 入母屋造り 茅葺きで 庭園含め 国の名勝(同上)
庭園は 枯山水の 石組で 江戸末期の 武学流と聞く(同上)
大規模な 縄文遺跡 発見と ニュースで知りて 訪ね来るなり(三内丸山遺跡)
球場の 工事で発見 この遺跡 三十万の 人を集めん(同上)
六本の 巨大な柱 見つかりて 想像膨らむ 夢も楽しき(同上)
弘前の 旧図書館の 建物は ルネッサンス調 木造三階(旧弘前市立図書館)
石場家は 江戸中期の 建築で 豪商住宅 国の重文(石場家住宅)
名工の 堀江佐吉の 傑作で 銀行建物 国の重文(青森銀行記念館)
築年が 不明とされる 払田柵 横手盆地に 古代のロマン(払田柵跡)
文献に 記載のない 城跡で 丘陵含め ドーム二十個(同上)
広場には 勝者と敗者の 銅像が 建ち並ぶなり 古戦場跡(平安の風渡る公園)
籠城は 不利な防御に 思うかな 金沢柵 兵糧攻めに(金沢柵跡)
横手では 後三年の役 過ぎし後 改められし 大鳥井柵(大鳥山)
わが秋田 終の棲家に 定めたる 菅江真澄を 敬い詣ず(菅江真澄の墓)
星川家 曲り家造り 茅葺きで 江戸末期の 豪農の家(みちのく民俗村)
掘立の 切妻屋根の 小屋造り 室町時代の 庶民の住居(同上)
野草園 戦後間もない 開園で ドーム二個分に 草本五百(仙台市野草園)
園内の 自然なままの 景観が 植物園と 異なり見ゆる(同上)
ファシズムの 凶器に倒れ 殉死した 斎藤實 哀れの哀れ(斎藤貫記念館)
内田家は 水沢伊達家の 家臣にて 九十二石の 門構えかな(旧内田家旧宅)
馬屋なく 主屋の角は 棟続き 土間に板の間 武家の曲り家(同上)
刺巻の 三ヘクタールの 湿原に 六万株の 水芭蕉咲く(刺巻湿原ミズバショウ群生地)
弘前や 三大桜に 武家屋敷 五重塔に 宣教師館(弘前)
梅田家は 寄棟造りの 茅葺きで 百石取りの 武家屋敷なり(旧梅田家住宅)
岩田家は 三百石の 中級で 家は質素な 寄棟造り(旧岩田家住宅)
昭和末 弘前城の 三の丸 植物園に 改修されし(弘前城植物園)
対馬家の 瑞楽園は 武学流 明治中期の 作庭と言う(瑞楽園)
津軽では 五ヶ所の庭が 選ばれし 瑞楽園も 国の名勝(瑞楽園) 観光名所3
こみせには 歩行者守る 優しさが 溢れている 雪国ならでは(黒石こみせ通り)
中町は 切妻屋根の 二階建て 調和のとれた 商家連なり(同上)
高橋家 むかし米屋の 豪商で 間口は広く 国の重文(同上)
西谷家 大正初期に 移築して 呉服屋始め 今は美術館(同上)
松の湯や 平成五年に 廃業し 閉じた玄関 哀れに眺む(同上)
三内の 丸山遺跡 気にかかり 一年経ても 代わり映えせず(三内丸山遺跡)
昔から 縄文遺跡 有りしこと 知られながらも 無謀に開発(同上)
湯沢にも 洒落た洋館 残れども 外観痛み 哀れに思う(旧雄勝郡会議事堂)
八戸の 是川遺跡に 感動す 復元住居に 香炉形土器(是川遺跡)
住居内 リアルな人形 展示され 一緒に座りて ワインを所望(同上)
味気ない 是川遺跡の 資料館 棚に並べて 保管するだけ(同上)
五戸には 江渡家住宅 訪ねたり 築二百年の 国の重文(江渡家住宅)
現役の 古民家のため 非公開 それが自然の 暮らしと思う(同上)
庭園は 回遊式の 平庭で 垣根は高く 刈り込み見事(同上)
江渡家とは 南部五戸の 代官で 下役人の 家柄と言う(同上)
直屋には シートが張られ 哀れなり 国の重文 格差あるかな(旧笠石家住宅)
床下は 通気のための 隙間あり 冬は囲いて 寒さ防ぐか(同上)
深川の 渋沢邸は 移築され 三田から遥か 古牧温泉へ(旧渋沢邸)
邸宅は 四千坪の 延床で 木造二階 国宝級ぞ(同上)
昔より 争いの種 縄張りで 伊達と南部の 境塚見る(相去境塚)
地蔵堂 芭蕉の跡を 拝みつつ 越える峠に 最上川見ゆ(猿羽根峠)
夢心地 旅は浄土の 一里塚 心の通う 友と歩けば(同上)
尾花沢 心づくしの 持て成しに 芭蕉と曾良は 名句で感謝(芭蕉清風歴史資料館)
院内の 縄文住居の 洞窟に ビバークしたり 往時を偲び(岩井堂洞窟)
古川に 日本最古の 人類史 訪ねし後に 捏造と知る(馬場壇A遺跡)
大工どん 明治中期の 建築で 大迫から 移築したとか(遠野ふるさと村)
川前家 江戸の末期に 建てられて 土淵町に あった曲り家(同上)
大野どん 大野集落の 菊池家で 明治は初期の 築年と言う(同上)
この家は 直屋造りの 寄棟で 江戸は中期の 庄屋の家と(同上)
肝煎りは 庄屋のことで 鈴木家は 綾織にありし 江戸末期築(同上)
弥十郎 二階建ての 曲り家で 宮守からの 移築とされる(同上)
友来たり 遠野をめぐり よもすがら 河童を語り 酒を楽しむ(遠野カッパ渕)
佐藤家は 侍を捨て 移住して 川口地区の 庄屋と言いし(旧佐藤家住宅)
中門を 入ると直屋の 主屋が建つ 茅葺き屋根が 銅板葺きに(同上)
江戸と言う 古きを訪ね 新しき 時代を歩む 江戸の続きを(旧尾形家住宅) 観光名所4
茅葺きの 家に憧れ 四十年 愛しき風情 残る嬉しさ(同上)
トタン屋根 嫌いな家の その姿 昔の茅は 有難きかな(楢下宿脇本陣滝沢屋)
遺構見る 羽州街道 楢下宿 脇本陣の 滝沢屋にて(同上)
都合よく 人は生まれて 死ぬのかな そうではないと 響く鐘の音(羽州街道楢下宿)
雪の中 羽州街道 滑津宿 旧本陣の 安藤家見る(羽州街道滑津宿)
名ばかりを ダムの水面に 留め置き 訪ねあぐるや 波瀬の宿場(同上)
欲張りて 恋も情けも 露と消え 芭蕉を慕い また旅に出る(最上川舟下り)
盛岡の 一ノ倉邸 開聞す 明治末期の 庭園建屋(盛岡一ノ倉邸)
邸宅を 建てて続かぬ 維持管理 二代三代 続かぬ時代(同上)
庭園は 三千坪の 広さあり 衰退防止の 保護庭園とか(同上)
築山は 草茫々と 寂れたり 自然的かな 倒木のあと(同上)
池の水 枯れて哀れな 池泉式 維持管理費は 庭石払いと(同上)
深浦の 不老ふ死湯の 露天風呂 ひっきりなしに 客が出入り(黄金崎不老ふ死温泉)
弘前の 藤田記念園 大庭園 六千坪の 和洋折衷(藤田記念庭園)
洋館は 大正時代の 建築で 和館は戦後 移築したとか(同上)
珍しや 灯籠の笠 自然石 藤田庭園 洒落た趣(同上)
背に一つ 旅道具のみ 携えて 漂泊の路 また歩きたき(渉成園)
枳殻邸 京都駅前 大庭園 一万六千 坪の広さあり(同上)
印月池 三千坪の 大池で 回棹廊は 優美なる橋(同上)
石垣は 城郭の如し 枳殻邸 お東さんの 別邸なれば(同上)
天と地に 生かされている この身かな 拍手打ち 南無阿弥陀仏(同上)
砲台は 江戸の末期の 築造で 円形堡塁 国の史跡に(西宮砲台)
灘に来て 酒蔵めぐる 小旅行 昔の蔵が 資料館となり(灘五郷)
白鶴は 大正初期に 建てられし 一号蔵を 資料館とす(同上)
江戸の初期 菊正宗は 創業し 白鶴酒造と 同族と言う(同上)
築園は 大正初年の 須磨離宮 幾何学的な 西洋庭園(須磨離宮公園)
旅慣れて 旅行く身には 不安なし あるはお金の 寂しさばかり(同上)
中門に 離宮時代の 遺構見る 宮内省の 置き土産かな(同上)
半円の ホテルに客船 神戸港 特徴的な 港の眺め(神戸港) 観光名所5
コロンブス 大西洋を 横断し その帆船を 復元展示(サンタ・マリア号)
神戸港 商船三井の ビルデング 七階建ての 大正築年(神戸港)
ポートタワー 昭和中期の 築年で パイプ構造 世界初とか(神戸ポートタワー)
博物館 昭和初期の 建築で 国宝重文 七点収蔵(神戸市立博物館)
震災の 悲劇は日々に 遠ざかり 新たな洋館 港に増えつ(神戸港)
高級な レストランなど 並び建つ 北野通りの グラシアニかな(神戸北野)
明治末 ロシア商人の 住宅で 現在カフェの パラスティン邸(同上)
シェー邸は 明治末期に 建てられて 今は流行りの スターバックス(同上)
明治末 ハンター邸は 建てられし コロニアル調は 国の重文(同上)
明治末 トーマス邸は 建てられし レンガ造りの バロック様式(同上)
トーマスは ドイツ商人 住宅は 風見鶏の 館と称され(同上)
ドイツとは 戦争となり 建物は 没収されて 日本人住む(同上)
大正期 ヴォルヒル邸 建てられて オランダ国の 領事館なり(同上)
香りの家 オランダ館と 称されて どこもかしこも 金が要るなり(同上)
大正期 ドレウェル邸 建てられし 木造二階の モダンな板張り(同上)
明治末 教会として 建てられて 変遷しつつ 文学館に(神戸文学館)
ハンター邸 明治中期の 建築で 移転されても 国の重文北野(旧ハンター住宅)
谷崎の 三年住居の 芦屋には 昭和末期に 記念館建ち(芦屋市谷崎潤一郎記念館)
伸庵や 東京芝より 移築され 数寄屋造りの 茶室の一つ(堺市大仙公園)
江戸中期 黄梅庵は 建てられて 利休に因み 移築されたり(同上)
庭園は 築山林泉 回遊で 八千坪に 休憩舎あり(同上)
作庭は 中根金作の 力作で 平成元年 開園せしと(同上)
百舌鳥にある 高林家の 住宅は 非公開のため 外観見物(高林家住宅)
閉ざされた 高林家は 元庄屋 建屋四棟 国の重文(同上)
小寺家の 相楽園は 明治末 六千坪に 庭と建屋と(神戸相楽園)
小寺家は 三田藩士の 実業家 神戸に寄贈 都市公園に(同上)
空襲で 厩舎一棟 残されし 浣心亭は 戦後の再建(同上)
北野より ハッサム邸は 移築され 震災遺構の 煙突展示(同上)
馬屋では 日本一の 豪華さで 彦根に並ぶ 国の重文(同上)
入口に 蘇鉄がありし 明治より 蘇鉄園とも 称されたとか(同上)
諏訪山の 八の字形の らせん橋 南京錠が 無数にかけられ(ヴィーナスブリッジ)
灘五郷 御影郷には 八酒屋 菊正宗や 剣菱があり(灘五郷)
京の街 地図を広げて 見いいれば 東西南北 歩いてみたし(旧二条駅舎)
旅すれば 移ろう歴史 目に浮かぶ 京都に残る 千年の夢(島原)
気がつけば 三十路を生きる 歳となり 時を惜しみて スイスに旅立つ(スイス旅行) 30歳
独り身を 楽しく思う 時は今 三十路を過ぎて スイスに遊ぶ(同上)
幾重にも 重なり聳ゆ アルプスの 山の景色は 心貫く(同上)
絶景や 感きわまりて 言葉なし スイスの山の 透き通る色(同上)
憧れの マッターホルンを 背に受けて カメラにおさまる 心弾みし(同上)
触れ合いし 限りある時 尊びて 異国に遊ぶ 日々を忘れず(同上)
欲の欲 浸りて病んで なる果ては 欲なき自由 ただ旅の中(同上)
城見れば 流れる時の 間より 武士の世の中 ふと偲ばれる(高野山旅行記1) 34歳
咲き匂う 梅の盛りを 想いつつ 彦根の城の 内濠をゆく(彦根城)
照らされて 雨に打たれて 幾月日 城に残れる 武士の面影(同上)
庭見れば にわかに思う 山と川 火は湧き燃えて 水流れるる(同上)
誰ひとり この世を知りて 生まれ来ぬ あの世を知りて 死ぬ道もなし(同上)
陽は輝れど 無常の中の 一時を 楽しむわれに 傘捨て難し(同上)
開国も 鎖国もなかり 人の世に 悟る人々 生まれ来れば(同上)
ありがたや 十年ぶりに 参り来て 千畳敷きに 首を垂れる(東本願寺)
釣り合わぬ 塔と思えど 鎮座する 古都のいらかは 薄らぐばかり(同上)
清水の 月を眺める 人はなし 夕日に消える 足音も絶え(清水寺)
夕焼けに 清水寺は 輝らされて 燃えずに残る 影や幻(同上)
泡沫に 浮かぶ命の はかなさや 清水寺に 冬の夕暮れ(同上)
賀茂川の 清き流れに 鳥の群れ 河原に散りばう 塵の貧しさ(賀茂川)
風渡る 鞍馬の山の 奥深く 木の根踏みつつ 手を合わせ行く(鞍馬寺)
何と言う 神を祭るか 知なねども 自然が神と 祈る柏手(貴船神社)
山深く 人家少なく 水澄んで 貴船の川に 蛍玉散る(貴船川)
公家は絶え 明治は遠く なるとても 待つに空しき 愚者の溜息(岩倉具視旧居)
隠遁や 空し悲しき 時の夢 人それそれに 聞く雁の声(同上)
赤松の 木立に白き 比叡山 枯山水の 奥座敷にて(円通寺)
捨てる世も 逃れる山も 今はなし 自由自在の 旅に死あれば(慈尊院)
九度山も お大師様に 護られて 真田の意地も 清く流れる(真田庵)
信ずれば 高野の山の 奥深く 真の言葉 胸に聞こゆる(金剛峯寺)
消えてゆく 浮雲朝露の 人の生 消えゆく前の 旅や尊し(同上)
人々の その様々な 思い入れ 汲んでくれるは 空海大師(同上)
何と見て 何と悟るや 庭の石 自然石にも 人の意思あり(同上)
観念が われを古寺へと 誘える その果て知らぬ 旅の楽しさ(同上)
目を閉じて 大きく息を 吸い込めば 千古の心 浮かぶ高野山(同上)
うっすらと 庭を清める 山の雪 雪降らねばと 思う淋しさ(同上)
観るよりも 肌に伝わる 高野山 空海大師の 心頼もし(同上)
眺めれば 眺めるほどに 哀れ増す 写ろう四季の その早さには(同上)
高野には 旅の仁王が 建ち並ぶ 右に西行 左に芭蕉(大門)
護摩の木に 愛する人の 名も書きて お大師様の 加護を求むる(奥ノ院参道)
夕陽さす 高野の山の 杉林 いずれは帰る 阿字のふるさと(同上)
鳥は飛び 魚は泳ぎ 花は咲く 人は考え 人は旅する(清浄心院)
宿坊の 襖にもれる 朝の経 心静かに 口を合わせる(同上)
宝塔は 砲煙弾雨に 尽きるとも 心の宝 尽きぬ星空(多宝塔)
紀の国 高野の山の お大師に 参り終えれば 同行二人(御影堂)
高野にも 時の権力 偲ばれる 豊織越えた 徳川の夢(徳川家霊台)
警察署 仏都の街の 景観に 隠れ建つかな 伽藍の林(高野派出所)
年長けて 人の命を 見つめれば 西行法師の 散華美し(橋本西行庵)
旅人に 祇園は遠く 点りけり 五条の茶屋にも 水が流れる(高野山旅行記2) 34歳
空き腹に ほど良き燗の 酒ありて 京の寒さも 何のそのその(東寺)
天高く 大師の徳や 五重塔 京の都の 果てに聳える(同上)
一代の 立身出世や 金字塔 なにわの城に 浮かぶ瓢箪(伏見桃山城)
見上げれば 桃山遠く 人遠く 明日を思う 今日の黄昏(同上)
流れ行く 時代の波の 高さより 人の心の 徳は嬉しき(旅籠寺田屋)
寺田屋の 柱の傷の 面影に 生死を賭けた 世明けをぞ見る(同上)
腐敗する 時の権力 清めては 土に帰りて 水は湧き来る(同上)
湯桶にも 時代を偲ぶ 寺田屋に 鉄火芸者の 足音ぞする(同上)
降る雪に 阿弥陀如来は 結跏して 浄土の夢を 語りけるなり(同上)
降る雪も 散り行く花も 美しや 命のからむ 四季の移ろい(平等院)
この世をば 予期せぬ旅を 思うかな 欠けゆく月も 冴え渡りゆく(同上)
浄土なる 夢の旅路を 訪ねても 降る雪同じ 生まれ変わらず(同上)
茶の匂い 門前通りに 香ばしく 雪降り積もる 宇治の浮島(同上)
うっすらと 樹木の枝を 塗り変える 平和なるかな 京の淡雪(海住山寺)
朝明けに 五重塔は 輝きて 小鳥さえずる 雪の山寺(同上)
高円の 寺より眺む 奈良京は ビルのいらかが 建ち競うなり(白毫寺)
巡る寺 賽銭箱が 目につきて 拝むだけにて 助けて仏(新薬師寺)
晴れてよし 春日の森の 雪景色 杉の緑に 朱色の社(春日大社)
日の本に 樹木の繁り ある限り 毘盧遮那仏の 久遠を願わん(東大寺大仏殿)
大空に 庇を伸ばし 息をする 大仏殿の 大らかさかな(同上)
ミニチュアに 千古を偲ぶ 形なし 奈良は静かに 滅んでゆくか(同上)
ゆっくりと 雪の石段 登り詰め 振り向く堂宇 奈良の樹の上(東大寺境内)
都合よく 人は生まれて 死ぬのかな そうではないと 響く鐘の音(同上)
花咲けば 心も開く 旅なれど 春を待つつつ 般若寺に入る(般若寺)
いにしえの 奈良の都の 路地通り ペダルを踏めば 住む人となり(興福寺)
寸分の 狂いもなく 反り返る 五つに重なる 木と土の塔(同上)
信仰の 眼差し遠く 苔むして 眺めるだけの 奈良の寺々(同上)
ほろ酔いて 奈良の夕暮れ ぶらつけば 歌湧き出でて 俳句ひらめく(同上)
深々と 雪も降るなり 万灯籠 一人旅路の 玉砂利を踏む(春日大社万灯籠)
法華寺や 昔の栄華 偲ばせる 小寺とは言え 境内広し(法華寺)
青春は 遠くなりけり 年々に 近く思うは 奈良の細道(平城宮跡)
蝦夷地より 大局殿を 訪ねれば 匂う都は 地平線の上(同上)
寺の名は 柔らかくあり 御仏の 技芸天女は 美人なりけり(秋篠寺)
いにしえの 七堂伽藍は 滅んでも 街は栄えん 西大寺かな(西大寺)
名も知らぬ 寺の門前 過ぎし後 行基菩薩の 入寂を知る(喜光寺)
振り向けば 錦の御旗 朽ちもせず 鮮血そそぐ 赤き屏風絵(垂仁天皇陵)
学浅く 歳そこそこに 参り来て 御目の雫 拭う術なく(唐招提寺)
醒ぬうち 色褪せぬうち 訪ねたき 唐招提寺の 若葉の雫(同上・高野山旅行記3) 34歳
青空に すらりと伸びる 東塔は 露を払いて 金堂に添う(薬師寺)
ずっすりと 時代を支え 聳え建つ 奈良の都の 寺の甍は(同上)
大寺が 小寺となりて 思うこと 流れる時の 振幅を知る(大安寺)
ひっそりと 本堂のみが 残されて 野良犬も歩く 大安寺かな(同上)
木や花に 人を見つめる 目があれば 幸せなりと 思う古寺(同上)
二月堂 若草山を 借景に 奈良には広き 庭もありけり(依水園)
茅葺きの 茶室に積る 白雪を 溶かして沸かす 茶の湯は楽し(同上)
何のため 庭はあるかと 考える 答えは一つ 自然回帰と(同上)
点々と 雪に景色を 改めて 緑にとける 池に佇み(同上)
泥よりも 雪を愛する 大和人 泥に生まれる 命も知らず(同上)
水に依り 庭を支える 東大寺 雪降り帰る 奈良の水取り(同上)
濁っても 伽藍を写す 池の水 奈良には古き 猿沢の池(興福寺)
一流の 宿に寛ぐ 時はなし 我が放浪は 侘び寂びの中(菊水楼)
貴婦人が 池面で化粧 するような 奈良のホテルの 慎ましさかな(奈良ホテル)
しんみりと 奈良の街並み 夕暮れる 木造三階 笹乃屋旅館(笹乃家)
日は暮れて 帰る宿路に 愁いなし 明日があると 思う楽しさ(民宿さきがけ)
またいつか 奈良の都を 訪ねたき 日本は大和 心の古里(奈良駅)
長谷寺に 空海大師 訪ねれば 我が身は一人 心は二人(長谷寺)
枯れ枝に 花咲く如し 綿雪が 花のみでらの 山一面に(同上)
雪踏んで 長谷の小路を 分けゆけば 過去から今日へ 流れる清水(同上)
日はめぐり 命はめぐる 土の上 雪かき踏んで めぐる仏閣(同上)
柔らかな 屋根の雪にも 見えて来る 室生の寺の 女人の思い(室生寺)
もう一度 訪ねてみたい 室生寺の 年越す頃の 山の静かさ(同上)
重ね着の 裾から脚を 見る如く 室生の塔の 悩ましさかな(同上)
杉を植え 杉を伐して 杉を挽き 杉に住まうは 過ぎたる民か(同上)
ふり向けば 女人高野の 石段に お大師様の 励ます声す(同上)
室生寺に 泊まりてみたき 宿あれど 失業者に 敷居き高く(橋本屋旅館)
大和・伊賀 柳生の剣は 聞かねども 鍵屋の辻に 残る剣客(伊賀上野)
蓑虫の 鳴き音を聞きに 来てみれば 閉門されて 冬籠りかな(蓑虫庵)
城に合う 瓦の校舎 木の緑 日本が遠く 変りゆくのに(上野高校)
高虎の 城は昭和に 蘇り 平和を刻む 天守美し(上野城)
三百年 年は流れて 世は変り 天守と並ぶ 俳聖殿かな(俳聖殿)
見上げれば 芭蕉の夢は 輝きて 昭和の空に その夢を追う(芭蕉像)
少年の 憧れ胸に 現れる 忍者屋敷の からくりの壁(忍者屋敷)
黒染めの 衣の色に 流行りなし 流行りなければ 捨てる物なし(芭蕉翁生家)
空腹に 一汁一飯 美味しかり 野山を一人 旅すればこそ(同上)
幻の 棲家となれる 庵にも 心は通い 春来るらし(同上・高野山旅行記4) 34歳
み仏に 仕える身とは なれぬども めぐらす思い み仏の中(同上)
楽をして 苦しみもして 旅にある 旅の日々には 戒律はなし(同上)
欲剃らず 頭も剃らず 黒染めに 心も染めず 肉食妻帯(同上)
生れ来て 物心知り 旅をして 仏心と 詩心を知る(同上)
神の国 仏の国と 差別せず 敬う心 貴しとする(伊勢神宮内宮)
駆け足で 人波の中 潜りぬけ 内宮外宮の おかげ参りかな(伊勢神宮外宮)
絵葉書の 印象深し 円覚寺 幼き頃の 憧れ思う(円覚寺)
人と人 巡りめぐりて 世の中に 旅こそ近き 出会いなるかな(同上)
山桜 山一面が 山桜 杉の木立が 恥しくあり(如意輪寺/吉野山旅行記) 37歳
西行の 死ぬほど愛し 吉野山 恋し焦がれて また旅に立つ(同上)
うららかな 春の陽射しに 桜花 吉野の他に 山はあるまじ(吉野山上千本)
様々な 哀しみ溢ふる 吉野山 今は桜の 喜びばかり(同上)
憧れて あこがれて見る 花にこそ 心静かな ときめきはあり(竹林院)
また明日 まだ見ぬ桜 夢に見て 蒲団に入る み吉野の山(同上)
これでもか これでもかと 咲き誇る 吉野の山の ヤマザクラかな(吉野山上千本)
吉野山 見渡すかぎり 桜なり 溜息ばかり 山肌をさす(同上)
ヤマザクラ 染井吉野に 負けるとも 吉野の山は 桜のふるさと(吉野水分神社)
吉野山 桜の花の 咲く頃に ふと旅立てる ありがたさかな(同上)
西行も 芭蕉も飲みし 苔清水 われもまた飲む 旅人の水(奥千本西行庵)
うぐいすの 迎える声に 誘われて たどり着いたり 西行の跡(同上)
ほのぼのと 昇る朝日に 包まれて 美をあらそえる み吉野の山(吉野山一目千本)
花の下 死なんと言いし 聖あり その花の下 われも同ずる(吉水神社)
木の間より 一目千本 眺むれば これぞ吉野の 見納めと見る(同上)
吉野山 霞か雲か 綿雪か 月も朧に 惑わすばかり(金峯山寺)
眼を閉じて 思い興すは 吉野山 吉野の他に 花は咲きしも(同上)
歩いても 歩いてもなお ヤマザクラ そんな桜を 見たことはなし(ケーブルカー)
登るほど 心は細る 山路越え めぐる秘湯に 高野は高し(玉川峡)
みちのくの 秘湯の旅を 中断し 紀州の秘湯 訪ねて来たり(龍神温泉)
新しき 槙の木精 ほとばしる 泊まりてみたき 宿に幸あり(同上)
日高川 水音高く 流れ行く 雨とばかりに 思う枕辺(同上)
ヤエザクラ 露天の風呂に 色気あり 龍神温泉 下御殿かな(同上)
ふるさとに やっと帰った 心地する 高野の山に 跪拝せし時(金剛峯寺)
営々と 法灯絶えず 年ふりて 昔ながらの 鐘の音響く(同上)
どの庭も 掃き清められ 美しく 高野の山は 慎ましきかな(天徳院庭園)
それほどに 興味のわかぬ 寺に来て 火山の如く 湧く素晴らしさ(当麻寺)
当麻寺も 役行者の 開基なり 吉野に続き 歩き行くかな(同上)
聳え建つ 三重五重の 塔よりも 心に残る 人との出会い(同上)
桜花 お寺の鐘に 寄り添いて 当麻の寺に ざわめきはなし(同上)
仏臓は 昔ながらの 堂にあり 日射しは浅く 眼差し深く(同上)
大和路は 心の底の 故郷ぞ また訪ね来る 望月の頃(同上)
庭ばかり 訪ねて歩く 旅にあり 空しく思う 庭もなければ(当麻寺中之院庭園)
庭を観て 遠き山河 思い見る やがて宇宙の 果てまでも視る(同上)
庭を見て 心静まる 経験を 幼き日より 重ねて来たり(同上)
ユニークな 傘形をした 東屋に 茶室の如く 安らぎを得る(同上)
斑鳩に 太子拝まず 急ぐゆく 旅の終わりは いつも走りし(法隆寺)
あれこれと 訪ねてみたき 寺多く 逸る心に 時は過ぎゆく(同上)
滅びゆく 地球の姿 目前に 滅んでなるかと 思う悔しさ(北アルプス上空)
熊野へと 四天王寺を あととする 世紀も末の 蟻の一人かな(熊野三山旅行記) 37歳
いにしえの 人と心を 偲ぶのは 古書を枕に 旅寝するのみ(四天王寺)
信貴山は 山の景色に 融和して 千年経れば 準自然なり(朝護孫子寺)
山々が 森を育てて 人はあり 連なる命 流れる月日(同上)
戯れる 地蔵小僧も 信貴山上 子供心に 宿る純真(同上)
神仏の 国は熊野に 消えたるも あると信じて めぐる楽しさ(熊野本宮大社)
手を叩く 社に神は 見えぬとも 自然の神 今日は雨になり(熊野速玉大社)
拘らぬ 心をもって 旅をする 熊野と高野 吉野の三野(同上)
山は神 水の飛龍も 神と見て 自然を愛す 日本の心(那智滝)
那智の塔 四百年の 空白を 赤く埋めて また萌えんとす(青岸渡寺)
寺院には 兵火の禍 数多あり 守り攻めるも 時の権力(同上)
不可解を 神の仕業と 思うのも 人それぞれの 那智の山々(熊野那智大社)
林立す 橋杭岩の 一本に 古人の 夢ぞ偲ばれる(橋杭岩)
その昔 波の間に間に 暮らたり 遠く眺める 今日のひととき(潮岬)
流れねば 人の権力 腐敗せし 洗い清める 兵もあり(観心寺)
人の世の 歴史の重さ 抱え込み 寺も斯くある 山の静寂(同上)
破れても また蘇る こころざし 維新を越えて 聳え建つ塔(同上)
大阪は 見る物なしと 耳にして 見る物あると 目は答えたり(天野金剛寺)
旅ゆけば 日本の国の 広さ知る 一里一里に 残る歴史に(同上)
父母の 恩義も忘れ 旅にあり 桜の春も 錦の秋も(粉河寺)
死んじゃえば 忘れてしまう 庭園も 生きてる限り 思うその庭(同上)
本堂に 続く石段 上る前 絵を見る如く 庭園を見る(同上)
秘められた 仏の像に 興味なし 生きてる庭の 有り難さかな(同上)
雉鳴けば 親とぞ思う 心もち 鶏は旨しと 思う性がある(同上)
枯れる枝 桜葉散りし 粉河寺 冬を迎える 木々うらやまし(同上)
見上げれば 竜宮門の 景観に ふと夢馳せる 西方浄土(同上)
根来寺の 歴史に浮かぶ 空の文字 焼かれて鋤かれ 若葉芽をふく(根来寺)
一幅の 絵画の美人 見る如く 心に浸みる 根来寺の庭(同上)
火の海に 呑まれ込まれず ただ一棟 国宝大塔 シンボルタワー(同上)
根来寺の 大塔こそは 別格で 日本最大の 多宝塔なり(同上)
紀州には 名所旧跡 数あれど 面積広く アクセスも難し(同上)
夢想する 熊野の山の 清らかさ 自然は神と 今日も信ずる(追憶)
真先に 訪ねてみたき 寺なれど 本坊休止に 挫ける旅師(東福寺/京都旅情1) 38歳
年末に 訪ねる寺は 静かなり 紅葉桜は 過去の彩(同上)
本堂の 甍の高さ 越えてゆく 師走の空に 白鷺一羽(同上)
反り上がる 屋根の庇も 初雪に 身を引き締める 京の年の瀬(同上)
大鳥居 くぐりて久し 神だのみ 金の成る木の 育つ遅さよ(伏見稲荷大社)
手を叩き 頭を垂れて 思うこと 神は身近に おわしますかと(同上)
その昔 山も神なる 伏見かな 寺に山号 神仏習合(同上)
神魂が 塚の回りを 蠢いて 社を護る 対の狐も(同上)
稲荷山 登り下りも 鳥居道 景気の良さを 朱色にかえて(同上)
女狐の 化けた姿も 美しく 騙し騙され それとも知らず(同上)
閉ざされた 御茶屋の門は 非公開 重文だけにに 戸惑うばかり(同上)
勧修寺に 心は白け 道暗く 鳥のさえずり 車に消ゆる(勧修寺)
庭あれど 姦しよぎる 高速道 二度と戻らぬ 山科の里(同上)
芝枯れて 時は行くとも 目の残る 昔訪ねた 芝の青さが(同上)
カナリヤの 啄む姿 見えぬとも 仏光院の 庭は変らじ(同上)
庫裡に咲く 随心院の 心地良さ 護り給えや 住持の如く(随心院)
空想す 小野の小町の 美しさ 化粧の井戸に 写る美意識(同上)
三宝や 帰依仏帰依法 帰依僧と 聞けば悲しや 僧は欲に消え(醍醐寺)
柔らかに 冬の陽射しが 屋根下る 空に輝く 遍照金剛(同上)
塔高く 時代は安く ビルを建て 歴史は沈む ビルの谷間に(同上)
弁財天 池の中にて 美しき 磨く鏡の 清らさから(同上)
人の世は 満ちる日のない 欲の海 生まれて消えて 打ち寄せる波(万福寺)
中国の 黄檗宗は 滅んでも 日本伝来 三百余年(同上)
ゆっくりと 時は流れる 仏殿に 思い興せる 開創当時(同上)
夕暮れを 急ぐ気持ちに なり得ない 京都に沈む 時なかりせば(同上)
文学が 殆ど消えた 平成を 古書を片手に 歩く淋しさ(石山寺)
天然と 人の細工が 融和する 石山寺の 石の上にも(同上)
灯篭の 明かりの消ゆる 時までは 離れ難しや 石山の寺(同上)
御影堂に 積もる雪さえ 尊くて 三度唱える 遍照金剛(同上)
近江湖に 懸かる名月 眺めんと 一亭建てる 美への憧れ(同上)
現なる 人の世の中 旅しても 忘れがたきは 石山の鐘(同上)
小説は 源氏ばなしに 尽きるかな 紫式部 超える人なく(同上)
清水の 舞台騒がし 石山の 舞台の上は 美女一人なり(同上)
義仲寺に 芭蕉の墓を 参らんと 来れば閉門 年末年始(義仲寺)
侘びもなく 寂びもまたなく 近江路は 日本円満 その中にあり(円満院)
庭を見て 世阿弥の作と 見え難く 円満院に 残る不満か(同上)
雪景色 中途半端な 薄化粧 池の岩をも 包めば自然(園城寺)
三井寺の 年の鐘より 響きけり 円珍下山の その志(同上)
両翼を 伸ばした屋根に 雪落ちる 生きとし生きる 鳥の如くに(同上)
いにしえの 石組築石 懐かしく 思い思いの 命す過ぎれば(同上)
また違う 尺度で塔を 眺むれば 大工左官の 腕は光れり(同上)
三井寺は 城とぞ思う 石垣の 多きに恐れ 中世を行く(同上)
観音の 扉の奥も 銭の音 悲し悲しき 悲し悲しき(同上)
山里も ビルの谷間に 消えてゆく 琵琶湖の海の 歴史と広さ(同上)
風景が 歴史とダブり 見ゆる時 自ずと然り 山河美し(近江神宮/京都旅情2) 38歳
深みなき 神の社 詣でても 曖昧となる 明治の創建(同上)
手を合わせ 心を合わせ 祈りても 空しく帰る 神の不調和(同上)
一通り 人の遊びを 尽くしても 雪見に転ぶ 風雅は見えず(延暦寺)
神々は 森の精と うり二つ 樹木や岩に 宿り付くかな(上賀茂神社)
古都にあり 目立たぬ社殿 杮葺き 昔は遠く 消えゆくけれど(同上)
ほっとする 古都の奥行き その深さ 神社仏閣 あるがままあり(同上)
上賀茂の 森の静かさ 打ち破る カラスが鳴くも 犬の吠えるも(同上)
歩き来て ふと立ち止まる 楼門は 知る人ぞ知る 京の今宮(今宮神社)
楼門を 過ぎれば古き 杮葺き 溜息深き 未知との出会い(同上)
禅宗の 形にとらわれ 仰ぎ見る 三門赤く 梢は緑(大徳寺)
赤松の 木々の間に 聳え建つ 重層仏殿 僧の一本気(同上)
茶の道に 今日はなし 裏千家 こんにちはとも 挨拶できず(今日庵)
日蓮の 名前嬉しき 冬光り 今日から明日に 続く旭日(妙顕寺)
旅人の 殆どいない 寺に来て 恥しきかな 歴史も知らず(同上)
鐘楼の 音色楽しむ 旅になく 松の緑に 過ぎゆくばかり(相国寺)
覗かんと 思う心も 改まる 不許肉林の 禅の居住まい(同上)
残るもの 鴨の神の 柿より 糺の森の せせらぎの音(下鴨神社)
はっきりと 神社寺院の 境見る 鎮守の寺と 人は語らず(同上)
賑やかな 京の家並みを ふと過ぎて 佇むいらか 空晴れ渡る(百万遍知恩寺)
ゆっくりと 仏の声を 聴く間なく 冬を流れる 旅人哀れ(同上)
暮れてゆく 日を惜しみつつ 人生を 惜しみながらも 旅に常あり(金戒光明寺)
黄金は 陽を友として 輝ける 闇夜に見えぬ 人の道徳(金閣寺)
夕暮れの 金閣写す 池の水 主変るも 水は変らず(同上)
金銀も 池畔の石も 滅びるも 生きとし残る 大和麗し(同上)
ほんのりと 歴史や匂う 苔の色 見る物遠く 隔てゆくとも(同上)
鞘堂の 金色堂は 物足りず 昭和金閣 夕日に光り(同上)
麗しき 金の化粧も 夢の色 自ら映す 鏡なければ(同上)
人ごみを ふと離れれば 池ひとつ 安民沢の 飾らぬ景色(同上)
石庭を 眺めてみては 並び替え 遊んでしまう 竜安寺かな(竜安寺)
落ち着けば 落ち着くほどに 澄わたる 人と自然の 織りなす景色(同上)
様々な 垣根の形 見るにつけ 越すに超せない しがらみ思う(同上)
柵をして 人を通わす 園路より 飛び石を踏む 露地はつつまし(同上)
慎ましき 祇園の家並み 分けゆけば どきも抜かれる 寺の三門(知恩院)
法然の 念ずる声を 何と聴く 南無阿弥陀仏 親への知恩(同上)
名庭は 酒や肴を たずさえて 眺めるものぞ その酔い心地(同上)
知恩院 大寺の伽藍 整えて 静かに熟す 建築美かな(同上)
囲いせぬ 庭の緑に 池の水 うらやましきかな 雪国に比べ(同上)
徳川の 権力のみが また光る 寺の柱の 一つ一つに(同上)
刈り込んだ 寺の皐月が 美となれば 山に自生す 皐月は清し(同上)
瓦より 杮の色が よく似合う 自然に近き 方丈の屋根(同上)
艶やかな 桃衣の芸子 初詣で 八坂神社の 黒山の中(八坂神社)
祇園社に 鐘は響かず 東山 神社と寺の 隔たり遠く(同上)
禅寺は 外に厳しき 門構え 戒律守る 僧は少なし(建仁寺)
黒と白 緑と青と 薄茶色 開山堂の 今日の色具合(同上)
生きてこそ 死は見えて来る 旅枕 一人京都の 寺をめぐらば(同上/京都旅情3) 38歳
時は経て 一般公開 高台寺 心も躍る 庫裡の入口(高台寺)
庭もよし 茶屋もまたよし 高台寺 質素に装う 寧々の面影(同上)
霊屋に 寺の景色を 眺めれば 桐も葵も みな土の上(同上)
古都はよし 寺のいらかは そのままに 庭は変りて 咲く花の色(同上)
眺めれば 民家の屋根の アンテナが 八坂の塔を 淋しくさせる(八坂塔)
清水の 舞台を照らす 初日の出 行き交う人の 重みに耐えて(清水寺)
滑らかな 屋根の庇に 観音像 東の山の 変わらぬ景色(同上)
知れば知る 知らねば知らぬ 妙法院 庫裡の甍も 寺の歴史も(妙法院)
観光に 照らされざるも 美しく 蓮華王院 国宝の庫裡(同上)
数えても 数え切れない 観音像 迷い迷いは 妻となる人(同上)
何を見て 何を感じて 旅したか 知らずに京を また旅をする(智積院)
背丈より 遥かに高き 垣根かな 美を求めつつ 迷路を歩く(銀閣寺)
人は去り 銀には見えぬ 銀閣寺 向月台で 月に物言う(同上)
銀舎利の 景色を忘れ 池に立つ 侘びて寂れて また美しく(同上)
銀閣寺 最高峰の 寺なるや 特別史跡 特別名勝(同上)
一木に 季節を思う 銀閣寺 春遠からず 京の北山(同上)
見る石も 思う意匠も 夢うつつ 一人静かに 庭を愛でれば(同上)
草花の 生えぬ庭は 淋しいナ 土の匂いを 忘れたようで(同上)
閣よりも 美しきかな 東求堂 形ばかりの 美に目方なし(同上)
庭の中 五百余年の 美意識が 今も変わらず 生きて漂う(同上)
誰も来ぬ 庭の小径の 坂の上 隠れた眺めも 銀閣寺かな(同上)
楽しんで 苦しんで観る 庭の石 その間より 流れる雫(同上)
三本の 灯りの消えぬ 真如堂 高き低きを 競う貧しさ(真如堂)
名も知らぬ 三重塔 今愛し 江戸は後期の 傑作と見ん(同上)
玉砂利を 隅から隅まで 踏みわたす 年に一度の お宮参りかな(平安神宮)
唐門が 道路に目立つ 本願寺 杮の苔も 冬空に映え(西本願寺)
西東 別れてみても 同じ屋根 庇小さく 東を超えず(同上)
親鸞も 蓮如も知らぬ 分断を 遠く眺める 溜息白し(同上)
五右衛門の おっしゃるとおり 盗っ人も 尽きる日はなし 山門朽ちても(南禅寺)
変らざる 石の眺めの 寂しさよ 石に意思なし 裏も表も(同上)
いつの世も 庭に心を 安らんで 京の常々 豊かなりけり(同上)
方丈の 虎の子渡しの 大石は まだ見ん山の 肌とも思わる(同上)
美はいかに 緑と石の 釣り合いか もっと上手に 生かせるものを(同上)
禅林に 新風流れて 赤レンガ 今は昔の 水の架け橋(同上)
聳え建つ 時の力や 寺の堂 天災よりも 人災多く(同上)
刈り込めば 刈り込むほどに 哀れなる 生きとし生きる 花の命に(曼殊院)
石ばかり 見せようとし 丸めたる 皐月の花の 自在を知らず(同上)
手水鉢 ただの飾りと なるとても 庭に欠かせぬ 添景となる(同上)
生を見て 空を感じて 生を知る 諸行無常も 現実直視(寂光院/京都旅情4) 38歳
うっすらと 茶室を飾る 新雪は 秋より知らぬ 大原の里(同上)
降る雪や 融けて寂しき 寂光院 建礼門院 みな夢と消え(同上)
苔帯びて 景色は常に 変れども 樹木を映す 池は変らじ(同上)
年も明け 押すなとばかりの 三千院 苔も踏まれる 大原の寺(三千院)
一見の 旅を悲しく 思う時 また訪ね得る 今日の喜び(同上)
雪折れの 皐月の枝の 痛ましさ 囲いも知らぬ 住持は哀れ(同上)
雪見れば 冬が来たぞと 思い知り 融けて流れて 春をまた知る(同上)
ふと見れば 西行法師の 桜なり 袖を濡らして 帰る喜び(同上)
売炭翁 愛しゆかしき その名前 律川に見る 赤き橋にも(同上)
貴婦人は 質素華美を 知っている そんな様する 仁和寺の堂(仁和寺)
美はいかに 人はいかにと 思う度 追いかけまわす 小僧の如くに(同上)
寺を観て 庭を眺めて 過ぎるとも 悔いの残らぬ 今日のひととき(同上)
簾上げ 眺める美女も 小町かな 庭にとけ込む 花と思えば(同上)
やるせない 思い出ばかり 積み重ね 何と眺める 五重のいらか(同上)
山門は どこかと思えば 足遠く 道をたがえた 旅に暇あり(妙心寺)
法堂に 点る灯りは 薄暗く 新たな年の 飛龍は見えず(同上)
杮葺き 手前は瓦 奥はビル 妙心禅寺に 浮き立つ心(同上)
入れ得ぬ 門の扉を くぐり抜け 朱印を求む 旅人一人(同上)
太秦の 路面電車は 今はなく あれも京都と 思う昭和は(広隆寺)
拝めない 寺の秘仏に 興味なく しみじみ眺む 弥勒菩薩かな(同上)
朝早く 訪ねる寺に 人はなく 如来が右手 上げて招くか(大報恩寺)
賑わえる 天神様の 細道を 人をかき分け めぐる正月(北野天満宮)
菅公の 恨みは遠し 天満宮 香り新たな 平成の空(同上)
梅見れば 自ずと思う 菅公の 梅を愛した 思いの永さ(同上)
賑やかな 天満宮に 比ぶれば 平野神社は 寂しい限り(平野大社)
華やいだ 梅の花咲く 社より 古き桜の 蕾が嬉し(同上)
白川の 遊女の息や 切なかり 一度限りの 恋を惜しまば(祇園)
もののふの 猛き心に 磨かれて 美しくなる 大和撫子(同上)
洛南に 静かな時を 残してる 泉湧寺の 山の奥行き(泉涌寺)
洗われて 清められたる 山の上 自然景観 そのまま庭に(同上)
空海の 若き日偲ぶ 神護寺に 先の見えない 吐息溜息(神護寺)
美女二人 高山寺の 受付に 新たな名所 物言う観音(高山寺)
岩に建つ 美女の匂いや 遺香庵 遠い昔に 訪ねたけれど(同上)
国宝と 言われてみても ピンと来ぬ 細き柱の しなやかさかな(同上)
月渡る 川と思えば また嬉し 李白に見せん 大和の名所(渡月橋)
感動が 湧いてもこない 嵐山 タケシ・クニコの 店までも建ち(同上)
様々な 趣変る 石組みに 夢窓国師の 美を垣間見る(天龍寺)
見る旅に ふるさとの人 思い出す 枝垂れ桜の 腰の低さよ(同上/京都旅情5) 38歳
また訪ね 新たに刻む 清涼寺 仁王隠れる 嵯峨野の初春(清涼寺)
庭見れば 俄かに飛び立つ 二羽の鳥 生きとし生きる 朝の呟き(同上)
石仏に 備える花なく 大覚寺 一人淋しく 手を合わせゆく(大覚寺)
古の 名古曽の滝ぞ 恋しかり 廃れる前の 二十年前(同上)
歴史より 埋もれたるかな 後の世を じっと見つめる 広沢の池(同上)
京女 屋形の船に 侍らせて 眺めてみたき 大沢の池(同上)
誰とでも 心とけ込む 旅の宿 一期一会の 出会いもあれば(旅荘岩波)
中庭や 坪美しく 慎ましく 京都の宿に 残る思い出(同上)
階段を 踏み外しても 楽しけり 祇園の宿に 泊るあこがれ(同上)
美しさ 隅から隅まで 行き渡る 祇園の宿の 歴史の深さ(同上)
ゆっくりと 水は流れる 祇園にも ビルを夢見る 京の人々(同上)
残すべき 風土歴史が あればまた 枕の側の 水は絶えずに(祇園白川)
戯れて 過ぎたる景色 眺めれば 柳の下に 響く下駄音(同上)
白川の 水辺に遊ぶ 鴨さえも 楽しく見ゆる 祇園の宴(同上)
藤原の 栄誉栄華の 夢の上 民は土足で 眺める時代(平等院)
浄土には 純白の雪 よく似合う 汚れた俗世 包み込むかな(同上)
山里の 拙き道の その奥に 手に取る如く 浄土は光る(浄瑠璃寺)
極楽を 二つも見たり 西東 旅に勝れる 極楽はなし(同上)
永遠の 慈母優しさ 内に秘め 吉祥天女は 浄瑠璃寺の華(同上)
大谷は 我が生家の 檀家寺 京に来る度 お参りしたり(東本願寺)
枳殻邸 渉成園と 名を変えて 飛び地庭園 一般公開(同上)
名勝の 庭園だけは 訪ねんと 未訪問の 庭を巡るかな(同上)
石庭の 深き姿は 分からねど 大きく生きる 心学べり(龍安寺)
のんびりと 見る暇もなく 流される 苔の海原 苔の山々(西芳寺)
大原の 茅葺き屋根と 柿の木は 秋のふるさと 思わせるかな(大原の里)
目に見えず 音に聞こえる 滝の音 桂春院の 森の趣(妙心寺桂春院)
大らかに きめ細やかに 造られた 夢窓国師の 夢の三庭(等持院)
寂しさや 大仏殿は 今はなく 釣り鐘だけが 一つ残りて(方広寺)
血で染めし 京都の街を 見下ろして 東の山に 眠る志士たち(維新の道)
奥嵯峨に はかなく消えた 恋心 若いみそらを 散る花に見え(祇王寺)
山合いの 枯葉の上に 座りけり 五百羅漢は 夢見るように(石峰寺)
ゆかしさや 面影肌に 漂わせ 五条の茶屋の 馴染し芸伎(五条楽園)
どことなく いつか訪ねた 思いして 親しみやすき 大原の里(大原の里)
柔らかき 身体の線に 漂える 弥勒菩薩の 慈悲の深さよ(広隆寺)
空腹に 粗食はなし 旅にあら 風雅の心 美味を悟れり(空也滝)
鳥の声 雨の雫に 風の音 わが息荒く 鞍馬にひとり(鞍馬寺義経堂)
阿字池に 鳳凰堂は 浮き建ちて 阿弥陀如来は 輝くばかり(宇治平等院)
風雪に 百年過ぎれば 味深く その味わいを 宝物と言う(平安神宮)
目頭が 熱くなるなり 寂光院 小池に写る 過去の写し絵()寂光院
大原の 里に隠れた 三千院 杉の古木に 苔の絨毯(三千院)