長句(短歌・狂歌)壮年アルバム
登るほど 心澄みゆく 心地して 秋たけなわの 栗駒の山(同上) 30代①
ふるさとに 宝の山は 多けれど 知らずに老いて 悔いは残れり(同上)
鳥の声 そよぐ秋風 陽の光り 香る草木 せせらぎの音(同上)
登り終え 小さきながら 満足を 覚えて浴する 露天風呂かな(同上)
あくせくと 図面を書きし 始めより 早や十ケ月で 現場は終えん(同上)
草臥れて 顔も崩れて 目も虚ろ 竣工間際の 忙しさかな(同上)
設備屋の 仕事の深さ 教えられ 尊ぶ人と かまくらを見る(同上)
雪もまた 楽しむべしと かまくらに あふるる程に 賑やかなりし(同上)
来たる人 悉くみな 案内す 横手の城より 見るものはなし(同上)
転勤を 重ねて歩く 友の子の 記憶に残れ 横手のかまくら(同上)
ホラ貝の 吹く音街に 木霊せば 宙に踊れる 梵天飾り(同上)
梵天を 担ぐ男の 勇ましさ ほろ酔い顔の 諸肌赤し(同上)
降る雪も 苦にならざりし 陽が射せば 胸の底より 暖かくなり(同上)
春なれば 解けて消えゆく 雪なれど 空しからずに 雪像を見る(同上)
うららかな 春の陽射しの 心地良さ 身は勇躍し スキーは楽し(同上)
また一人 風雅の人と 巡り逢い スキー・ゴルフに 親しみも増す(同上)
世の中に 楽しきことは 二つのみ スキーすること 旅をすること(同上)
忘れ得ぬ 思い出今日も 残しつつ この世に年を 重ね行くかな(同上)
後輩は 素直にして てきぱきと 動きてよろし 伸びる人かな(同上)
連休は スキーと酒と 温泉と 年中行事さ 友を連れ来て(同上)
斜度があり コブの数も 多ければ 武者震いせけ ゲレンデの朝(同上)
数えれば 幼き日より 何千回 手に汗握り 滑りしことか(同上)
かくもまた 威厳に満ちた 山はなし 残雪多き 南部富士かな(同上)
夜桜に 酒盛る人は 僅かなり 横手の城の 桜少なく(同上)
友来たり ふるさとの山 見せなんと 海を伝いて 象潟に行く(同上)
旅に来し 想いに浸かる 時もあり 名所をめぐる 仕事の合間(北上出向時代)
この仕事 仮の仕事と 考えど 面白きまま 五年を数え(同上)
昼休み 昼寝をやめて 同僚と 詩人の跡を 歩く楽しさ(同上)
貧しみは 世俗を越えた 山暮らし 過ぎにし詩人 偲ぶ山小屋(同上)
一日は われを待たずに 過ぎてゆく 早く飲みたや 湯上りの酒(同上)
船に乗り 基地に働き 現場持ち われの仕事は 男の墓場(同上)
厳には 松の緑と 空の蒼 昇仙峡の 春はのどけき(同上)
常日頃 親しき輩 寄り添える 社内旅行も 派閥がありて(同上)
あれ見たい これも見たいと 予知なくも 詣でてうれし 社ありけり(同上)
何となく 昔の匂い する物に 近づく癖は わればかりかな(同上)
哀しさは 酔いにまかせて 欲も立ち ネオンの陰に 消えて行く時(同上)
一人なら 湖畔の宿に 靴を脱ぎ 暮れゆく富士を 見たいと思う(同上)
波しぶき 船のヘリより 飛散して 肌に冷たき 五月雨の湖水(同上)
もう二度と 顔を合わせる 事もなし 倒産前の 社内旅行かな(同上)
霧の中 幽かに姿 現せる 富士の高嶺の 懐に来て(同上)
何故ゆえに 古きは恋し 旅にある 名勝史跡を 訪ねるばかり(同上)
盛岡の 城跡に来し 口ずさむ 我が懐かしく 不来方の歌(同上)
ハイカラが 古き言葉と なりつつも 文化の光り 今も残れり(同上)
現場にも 慣れて久しく 面を取り 我が地をさらす 旅人の顔(同上)
ゴルフなど 好ましからず ブルジョアの 遊びと思う 喰わず嫌いかな(同上)
しみじみと スコアを眺め 溜息す コンペのあとの 息疲れかな(同上)
飲むほどに 長くなりゆく 鼻の下 あとに残れる 酔いの虚しさ(同上)
鶯の 宿ると言える 温泉に 仄かに匂う 夜鷹の香り(同上)
流し目に 気をよくするも 束の間で 楽しき酒 客を待たずに(同上) 30代②
飲むほどに 乱れる酌婦は 面白き 倅立ちしと 事務長はしゃぎ(同上)
行きずりの 酌婦は淋し 寝る時も 「早くしてよ」と 急かせるばかり(同上)
この現場 酒とゴルフは 尽きもせず ノミニケーション コンペケーション(同上)
現場では 格差はあれど 飲む酒に 上下を隔つ 垣根はあらぬ(同上)
世の中に 楽しき酒は 多かれど 真面目な酒は まこと少なし(同上)
カラオケを 歌い始める 酔い心地 理性は負けて 恥じを重ねる(同上)
身体寄せ 踊るダンスの 味気なさ 愛する人は 今いずこにか(同上)
酒飲めば 歌って踊るが 古代より 尽きせぬものぞ 今宵飲むべし(同上)
カラオケの 景品あけて 手にとれば ヒゲソリ一つ 早速使う(同上)
先輩と 和気あいあいと 酒飲めど やがて別れる あとの淋しさ(同上)
逆立ちも たまにやるなら 血も下がり 酔いにまかせて 廊下を歩く(同上)
若い気を 起こしてみれば 若くなく 起きるに起これぬ 回転遊び(同上)
ゲレンデを 我がもの顔で 滑ること 今は昔の 醜態とみる(同上)
かまくらの 夜は楽しき 花の宴 客は喜び われも喜び(同上)
久々に 握るバットは 空を切り 守れば逸球 地団駄を踏む(同上)
その昔 野球少年 自負しても 錆びた身体に 昔は帰らず(同上)
花の下 死ぬのは早し 五月雨の 田畑うるおし 実れる日まで(同上)
花よりも まずは酒飲む 花見会 美女が酌する 酒ならばこそ(同上)
ぼんぼりの 淡き明かりと 桜花 川面に映る 北上の夜(同上)
鳴く鳥は 梅に鶯 月に雁 桜にカラオケ ああ無粋かな(同上)
花も見ず 花見の宴は 幕を閉じ それぞれ散りし ネオンの花に(同上)
夕食に 時間も早く ふかし湯を 散歩をしたり 山の夕暮れ(同上)
懐かしい スイスの宿を 想わせる 酸ヶ湯の側の 山あいの宿(同上)
見渡せば 雲の頭に 岩木山 霞の果てに 津軽海峡(同上)
五月晴れ 心も晴れて 春スキー 我が世の春は 今盛りなり(同上)
川原は 染井吉野の 花吹雪 春爛漫に ただ酔うばかり(同上)
随分と 額の髪も 薄くなり 失うものは みな惜しきかな(同上)
青春は 孤雲の如く 過ぎて去り めぐる現場も 終えて短く(同上)
待望の 一眼カメラ 手に入れて 試し撮りする 現場の日暮れ(同上)
パーマかけ おしゃれをしても 我が顔は 強張るばかり 女は寄らず(同上)
この顔と この身体と この心 死に別れれば 何も残らず(同上)
淋しさは 己が顏を 見つめては 己は何か 問いかける時(同上)
我が顔は 喜怒哀楽と 無表情 平常心は 無表情かな(同上)
顔のこと 人はとやかく 言うけれど 言われてみても 何ともならず(同上)
この顔が 自分のもので ないように ふと思われる 激怒した顔(同上)
眼鏡を かけぬ男が 益荒男と 思いし意気も 今は砕けて(同上)
顔一番 心は二番 身は三番 身も心も 磨けば光る(同上)
川反や 友を連れたち 楽しめる この店ありて 川反をゆく(同上)
調子ずき 彼女の肩に 手を伸ばす 恥しきかな おのれの酒癖(同上)
妹に よく雰囲気が 似し君を 気にかけつつも 初めて誘う(同上)
精一杯 働きしあとの 生ビール 酒飲むために 働きしかも(同上)
ささやかな 仕事と家に 縛られて 平々凡々 老いてゆくなり(同上)
風呂敷を 広げ過ぎたか 歳祝い もう二度と見ぬ 顔ばかりゆえ(同上)
歳祝い 十六余年の 空白を 埋めるに余す 盆帰りかな(同上)
故郷の 実家が酒屋で ある限り 休みと言えば 手伝いをする(同上)
山脈の 水を集めて 満々と 北上川の 六十里の旅(同上)
十和田湖の 人の知られぬ 景勝地 十和田の主と また訪ね来し(同上)
かにかくに 十和田の日々が 恋しかり 我が人生の 花は咲きにし(同上) 30代③
十年を 隔ててみても 十和田湖に 我が青春の 思い出消えず(同上)
年ごとに 懐かしさ湧き 十和田湖に また立ち帰る 秋の夕暮れ(同上)
過ぎ往きし 時を捉える カメラこそ 旅に欠かせぬ 道具なりけり(同上)
土門拳 棟方志功 みちのくの とごか似ている 心なりけり(同上)
飲むだけの 旅では芸が なさすぎて フォトコンテスト 催してみる(同上)
待望の カメラを手にし 野や山に 被写体求め 歩く楽しさ(同上)
カメラ持ち 秋の十和田湖 被写体に 想い想いに 写す楽しさ(同上)
様々な 思い出残る 山に来て 共に遊びし 友ぞ恋しき(同上)
一枚の 写真撮らんと 皆々が 仕事以上に 真面目になりて(同上)
なごやかに 昼飯食べる 光景も 幹事としては またまた嬉し(同上)
数えれば 幾度酸ヶ湯 訪れて 幾度心を 慰められし(同上)
吉祥寺 町屋・本郷 相模原 柏も恋し 思い出多く(同上)
恩人の 子息の栄え 喜んで 心静かに 帰る楽しさ(同上)
華やかに 咲きにし花は やがて朽ち 咲かざる花の 実は美しく(同上)
雪国に 生まれ来しこと 喜ばし 埃なき空 スキーを楽しむ(同上)
せせらぎに 回る水車の 灯火は 窓の雪より 仄かに淡し(同上)
我が辞書に 後悔という 言葉なし 旅を重ねて 歌を詠むなら(同上)
夜もすがら 風呂と部屋とを 往復し 酒酌み交わす 孫六の宿(同上)
雪の中 趣一つ 添えなんと 咲きにし花は 白き湯の花(同上)
我が旅に 温泉めぐりも 入るほど 好きになりけり 鄙びた宿を(同上)
しんしんと 降る雪よりも 大人しく 辰子の像は 何を愁いいる(同上)
給料を そっくりそのまま 川反に 落とすが如く 通いつめたり(同上)
何となく 祇園の歌に 憧れるて 遊び歩くも 遊ばれぬ道(同上)
しみじみと 酒飲む店や 恋しかり 気心も知れ 眠りつく店(同上)
川反の 夜や恋しき 汽車に揺れ 灯りの残る 道を急ぎぬ(同上)
肌にさす 粉雪もまた 心地良し 朧月夜の 大沢の風呂(同上)
安全と 美観はいつも すれ違い 丸適マークを われは好まず(同上)
氷柱落ち 塩ビダクトに 穴が開き 諦め気味に 補修し歩く(同上)
深々と 頭を下げて お詫びする 酌婦の顔と 態度のまずさ(同上)
酔うほどに 高まる胸と 裏腹に 虚ろ目になり われを失う(同上)
馬鹿な真似 一つ二つと 繰り返し 酔いて忘れる 朝の淋しさ(同上)
一人去り 二・三人と 去り行きて 五男一女の 離散会かな(同上)
気心の 知れた同士で 飲む酒は 馬鹿丸出しの 乱痴気騒ぎ(同上)
好きもなく 嫌いでもない 感情は 人付き合いの上手と思う(同上)
笑うほど 酒のまわりは 早くなり 足腰立たず 空ろなりけり(同上)
その名前 恋しき人と 同じ名で ふと懐かしむ 二人のるり子(同上)
北上や 故郷の如く 想い出す 君住む街の ありがたさかな(同上)
帰り来て 落着き払う 影もなし 旅路のあとの 熱き想い出(同上)
去りゆけば 親しき仲も 薄らいで 忘れ去られる あとの淋しさ(同上)
映画見て 食事をしては 海に来て 嫁ぐ女性と 最後のデート(同上)
酒好きの 所長は嬉し 酔うほどに 話も弾む 現場の花見(会社復帰時代)
着る物を おしゃれと言われ 気をよくし キザと言われて また気をよくし(同上)
世の中で 忘れ得ぬ人 選ぶなら 有無も言わずに 芭蕉と答う(同上)
梅の咲く 沢には春が めぐり来て 広き山々 志いかに(同上)
始めより 好ましからず 人はなく 花見の宴の 顔合わせかな(同上)
花の下 女子学生は 慎ましく 花見をするも 麗しきかな(同上)
自宅より バイクで通う 現場こそ 長き出張の 願いでもあり(同上)
懐かしき 植物園の 木や草に 思い出す出す ふた昔前(同上) 30代④
夕暮れは 羊ヶ丘に 車止め 愛する人と 眺めてみたき(同上)
我が伯父は 北海道に 根を張りて 庭木の如く 伸びて久しく(同上)
何となく 重たき心 手に持って 暇潰しする 葬儀の前日(同上)
我が伯父の 月日と共に 庭の木々 ふるさと離れ 咲く花もあり(同上)
葬式と 結婚式に 顔合わす 親しき縁者 名ばかりとなり(同上)
一つ家に 初めて顔を 揃えたる 従兄もありて 夜は更けゆく(同上)
食うことが 弔うことより 先となる 生きている身の 姿なりけり(同上)
葬儀終え 親類縁者を 伴いて 上る峠は 五月晴れかな(同上)
我が母と 共に写真を 撮ることは 久しきことかな 母一人きり(同上)
山と川 ある街並ぞ 恋しかり クローバー摘みし 幼き心(同上)
木の香り 仄かに匂う 山の辺に 朝に夕なに 訪ねるばかり(同上)
勿体ない 滝ぞと思う 法体は 水はあふれて 白き泡吹く(同上)
吊り橋を 渡れば見ゆる 滝の壺 壺を知らずに 人は行き交う(同上)
故郷の 駅の面影 懐かしく 家の側には 面影はなし(同上)
酒気帯びで 免停となりで 足はなし 友を誘いて 旅を重ねる(同上)
ブスと言う 言葉は好きに なれぬけど 交わす言葉に ブスは禁句か(同上)
様々な 男と酒を 酌み交わし 交わり短かや 男の命(同上)
山路来て 疲労困憊 夢遠し 岩間を跳ねた 若さなつかし(同上)
夏陽射す 山の天気は 気まぐれで 登れる山は 限られて来し(同上)
田沢湖の 真夏の陽射し ほがらかに ねぶたへ向かう 心浮き立つ(同上)
かにかくに ねぶたの夜は 恋しかり 飛んで跳ねたり 土を離るる(同上)
はち切れる 若さ漲る ねぶたかな 跳人を真似て 輪の中に消ゆ(同上)
これ以上 飲めぬばかりに 酒を飲み 醜くなれる お祭りの酒(同上)
幾たびか 発荷峠の 上に立ち 初めて立ちし 眺めは消えず(同上)
野宿して 旅寝をするも 久しかり 寝不足ながら 峠越え行く(同上)
湯の中に 旅の疲れは 溶け込んで 八幡平は 風吹き抜ける(同上)
夜の蝶 追い回しては 逃げられて 諦めきれぬ あとの虚しさ(同上)
良き酔いは 楽しきままに 乱れつつ 楽しきままに 店を出る時(同上)
故郷に 錦を飾るも 束の間ぞ 尊き伯父は 永久に帰らず(同上)
赤滝と イワナの串焼き 種にして 山百合も咲く 村おこしかな(同上)
同じ年 同じ給食 食べながら 志すゆめ 何で異なる(同上)
悲しきは 昔と同じ 物差しで われを眺める 幼馴染かな(同上)
恥ずかしや 昔に書いた 恋文を 話してくれる 初恋の人(同上)
口聞けば 心が腐る 思いして 厭なやつには 黙してゆかん(同上)
三十路往く それぞれの道 故郷に 安らかにあれ 彼の人々よ(同上)
散文と 短歌と愛を 鏤めて 魅雪に贈る 旅人の詩(同上)
また一人 古き友達 やって来て 金はないけど 友こそ財産(同上)
盆踊り 踊りにゃ損々 姨娘なら 写さにゃ損々 カメラを向けよ(同上)
愁いあり 旅の途上に 息絶えて 咲かざる花も また捨て難し(同上)
健気かな 病の父を 労りて 朝は畑に 昼は会社に(同上)
何となく 急に親しさ 湧いて来る 一年ぶりの 花火の再会(同上)
このコーヒー 日々に貧しく なるばかり 最初はトラジャ 今はネスカフェ(同上)
流すなら 塵に塗れぬ 清き汗 自然の中に その汗を答う(同上)
中年と 呼ばれる頃の 恋の灯は 細々として 仄かに白し(同上)
三十路過ぎ 未婚の友は 二・三人 淋しさ隠し 祝う披露宴(同上)
設備屋の 仕事醒めて 眼を開かば 山川恋し 帰り急ぎぬ(同上)
桜咲き 花火と菊と かまくらと 四季折々に 賑わうお城(同上)
我が胸の愁いを伏して 誘えば 知己は喜び 菊は咲きにし(同上) 30代⑤
咲く花も 染まる紅葉も 美しく 心浮き立た 渓谷を踏む(同上)
傾いた 会社を離れ 我が友の 家に寛ぐ 穏やかさかな(同上)
忘れ得ぬ 街となりけり 角館 思い出だけが 空しく浮かぶ(同上)
倒産の 愁いも忘れ 旅をする どこ吹く風か 秋は深まり(失業時代)
行くあての なき旅ながら 苗場には 友の親戚 酒を振る舞う(同上)
湯上りに 坐禅するなり 山の宿 水音だけが 耳を横切り(同上)
結ばれぬ 恋に哀れを 感じつつ 熱くなりゆく 温泉めぐり(同上)
気心を 知り尽くしても 淋しかり いずれ婿取る 君を思わば(同上)
楽しさは ひとり静かに 湯浴みして 芭蕉の旅を 追慕する時(同上)
最愛の 友は来たりて スキーなど 楽しんでみる 失業の日々(同上)
十年を 隔ててみても 朽ちもせぬ 寺のいらかと 鹿の鳴く声(同上)
独りでも 想い出にせん 万灯会 行き交う人に カメラを託す(同上)
この心 旅に来し時 湧き出づる 歌よく詠める 自由な心(同上)
清らかに 澄みゆく心 覚ほゆる 室生の山の 寺をめぐらば(同上)
ふり向けば 女人高野の 石段に お大師様の 励ます声す(同上)
木造の 昭和の城は 平和塔 長しえなえに 聳えて欲しき(同上)
年経れど 昔の友の あたたかさ 変ることなし 富士の山に似て(同上)
ヒゲ面を 嫌う素ぶりも 見せもせず われを遊ばす 友の子供ら(同上)
旅終えて 家に帰りて 我が女と 飲む酒うまし 旅を語りて(同上)
もうそこに 春はめぐりて 来る頃に 君と最後の 旅となりけり(同上)
熱き夜の 想い出残る 稲住に 友と来しとも 淋しさ消えず(環境デザイン工房時代)
様々な 桜の花を ながめれど 歌にならざる 後の淋しさ(同上)
忽然と 遠い昔に 誘える 土の匂いし 竪穴住居(同上)
我が家が 明るくなれる 秋の夜 所せましと 友は来たりて(同上)
楽しさや 幼き日々の 想い出を 酒の肴に 噛みしめる時(同上)
疎遠なる 友と再び 湯浴みして 語る言葉に 紅葉色づく(同上)
煙り立ち 木の葉舞い散る 峡谷に 秋の愁いは 空に吸われし(同上)
カラス鳴き 松の梢は さやさやと 陽も紅の 秋の山寺(同上)
ダウンヒル 一気に滑る 苦しさよ ああ中年と われは成りしか(同上)
楽しさは 中くらいなり 我がスキー リフトは五回 ビールは二本(同上)
塩竈の 魚臭さは 薄らいで 出船入船 数も少なし(同上)
石段と 大きな釜が 遠足の 記憶に残る 塩竃神社(同上)
孤島なら 朽ち果てにける 五大堂 今も昔も 松島の顔(同上)
朝光り 松の島々 焼きつくし 眩しきほどの 客間の眺め(同上)
島々に 初夏の海風 吹き抜けて 松の葉香る 松島の沖(同上)
風流を 言葉すれば 俳聖の 三千里往く 松島の月(同上)
悠然と フルーツラインの 道側に 心なごます 庭はありけり(同上)
一夜にし 己が姿を 改める 地球の命 畏しきかな(同上)
水面には 磐梯山の 晴れ姿 五色沼にも 夏は来にけり(同上)
数ヶ月 現場の空気は 柔らかに 酒飲むほどに 親しくなれる(同上)
ぺこぺこと 頭を下げて 飲む酒は 酔うに酔えない 安き酒かな(同上)
よき宿に よき娘らと 戯れて 明るくなれる 年忘れかな(同上)
みちのくに 泊まりてみたき 宿多し 一軒一軒 泊る楽しさ(同上)
友ありて 異郷の山の 奥深く 吹雪の中を 訪ね来にけり(同上)
温泉に どっぷり浸かり 飲むビール アフタースキーの 楽しみとなり(同上)
また一つ 儲かったような 心地する 古き旅籠に 休息すれば(同上)
快く 仕事をしたり 岩手山 そこに再び 帰れぬ仕事(同上)
不謹慎 乙女の像に 立つ馬鹿が いなけりゃ見えぬ 像の大きさ(同上) 30代⑥
新緑の ブナやコナラに 包まれて 水面ゆらめく 森の湖(同上)
情深き 津軽美人に 囲まれて 一夜の宿に 残る思い出(同上)
泊まれれば ただされだけで いい宿に 美女と語らい 美女と踊りし(同上)
高ぶれば やがて傾く 人の家 地主の屋敷 旅館となりて(同上)
こんなにも 幸せに思う 朝はなし 美女の歌声 友の語らい(同上)
人生は 二万日の 旅なのに 一日尊し 斜陽館かな(同上)
憧れの 津軽金木の 斜陽館 太宰を知らぬ 今朝の旅立ち(同上)
気心の 知り合う友と 旅をする 最後の旅と なるも淋しき(同上)
夢を見て 夢を旅する 如くなる 心の通う 友と歩けば(同上)
幸せが 五臓六腑に 染みて来る 友と旅する 北の最果て(同上)
人類の 大きな歩み 知るような 海底深き 海峡の道(同上)
さわやかな 風は海峡 吹き抜けて 光り輝く 春の海原(同上)
うららかな 春の陽射しの 七つ滝 自然の中を 生きる楽しさ(同上)
こんなにも 幸せに飲む 酒はなし 三十路半ばの 谷地の湯の夜(同上)
湯の宿に 心の友と 酒飲めば 無邪気になれる 酔いの楽しさ(同上)
旅に生き 酒に滅んで 春を行く 残り少なき 自由の灯り(同上)
桂月の 愛せし宿に 憧れて 泊れぬままに 帰る寂しさ(同上)
さわやかな 湖風に吹かれ 永遠の 愛を重ねる 乙女の裸像(同上)
夢の中 さすらう如く 旅に生き さまよう如く 道を求むる(同上)
春めぐり また生かされて 旅をせし 青春消えぬ 十和田湖の日々(同上)
縁ありて 滅びし後も また来たり 大きな家に 寄りかかる春(北上出向時代)
移ろって 飾る錦の 悲しさよ 女は秋に 勝る術なく(同上)
遠くゆく 雲の姿は 見えぬとも 君との思い ずっーと棚引く(同上)
春来たり 人生の花 咲かぬとも 知る人ぞ知る 花は恋しき(同上)
空に咲く 花は大輪 夢一夜 空しからずに また夢に見ん(同上)
花を見て 花に迷いて 花を見て 迷える果ては 空の花火か(同上)
戯れて 過ぎて楽しみ 遠のけば 酒に負けたる 悲しみ深き(同上)
人生の 恥じを忘れて 生きようと 思ってみても 現実はあり(同上)
酒飲んで 夢の戯れ また破れ 生きる悲しさ 死する哀しさ(同上)
心から 人を恋する 時はなし 悲しき恋に 今日も破れて(同上)
親子華 鍋を囲んで ひとときの 思い出残す 北上の夜(同上)
北上に 人生五年 刻みつつ やっと通える 華との出会い(同上)
胃を抑え 歌うスバルの 悲しさよ 聞く人もなし 生の戯れ(仙台出向時代)
胸を張る 自分の勇気 友の笑み われを信じる 明日のささやき(同上)
かにかくに 友は恋しき この涙 拭い払いて また酒を飲む(同上)
起立する 青根の宿は 風のまま われは旅する 風に逆らい(同上)
政宗の 熱き想いが 湧いて来る 青根の宿の 雪の下にも(同上)
祈るもの 神や仏に 無けれども 宝くじには 運をかけゆく(同上)
いい男 四人そろって 笑い顔 この男たち 我が友となり(同上)
聞く人も 歌う人も 夢の中 ただひと時の 夢の戯れ(同上)
酒の飲めば 恥じ気負いも なかりけり 明日に恥じて 苦しむばかり(同上)
湯煙りに 誘われ続け 幾月日 心に残る 宿は少なし(同上)
吉野山 桜の花の 木の下に 恋する人と 寝てみたきかな(同上)
庭ばかり 訪ねて歩く 旅にあり 空しく思う 庭もなければ(同上)
吉野山 花の盛りに ひと時を 過せし思い 永久に忘れず(同上)
膝の皿 割っても歩く 旅をせし 友が妻との 約束守り(同上)
ふと見れば 泉ヶ岳に 陽は沈む 現場の窓の 景色楽しき(同上)
我が甥が 我がカメラで 取り上げて 写さんとする 初夏の戯れ(同上) 30代⑦
都会から 時あるごとに 散歩する 緑の中に 残る古(東京出向時代)
暖簾分け 古きに足を 踏み込めば 心豊かな 時代を感ず(同上)
夜空ゆく 夢や膨らむ 三十万 一人一人の 花は咲き散り(同上)
感激が 体の隅まで 残っている おらが秋田の 大花火かな(同上)
ありがたや 新日空の 仕事師が はるばる来たり 花火のために(同上)
遠くから 自分を見つめ 嫌になる 自己にこだわる 夢や欲望(同上)
湯煙りを 山の合間に 遠く見て 岬をめぐる 伊豆の船旅(同上)
穏やかな 伊豆の入江の 景色さえ 船底揺らす 天地の怒り(同上)
友の子と 金沢文庫を 訪ねれば 閉館なるも 庭を楽しむ(同上)
野毛山や 思い出もなき 山なれど 今年は重ねる 友の子らと(同上)
鎌倉や 来る度行く旅 数えても 数え切れない 歴史の深さ(同上)
雪降らぬ 能登半島の 妙成寺 コートは重し 財布は軽ろし(同上)
大和屋の 旅の一夜は 忘れらじ 二輪の花を 友と眺めて(同上)
大名の 末なる夢を 小野の春 殿様去った 上杉屋敷(同上)
風聞が 嬉し悲しく 聞こえ来る ふるさと遠く 暮らして居れば(同上)
甲板に コザを敷いて 酒を飲む 納涼船の 風流遠し(同上)
その昔 大型船の ブリッジで スコッチ飲みて 見し星座あり(同上)
花の宴 心浮かれて 飲むほどに 馬鹿現れて 気は遠くなり(同上)
忽然と 死に至りても 不服なし 花に浮かれて 月に見とれて(同上)
目の中に 入れてしまえば それまでの 甥子の姿 甥子の未来(同上)
三人の 甥子を連れて ひとときを 楽しんでいる 独身なれば(同上)
可愛いいよ 今が一番 甥子たち ああ我が生き甲斐 いつまで続く(同上)
子供らを 連れて行くのは 展望台 北上川に 和賀川が入る(同上)
旅すれれば 心素直に なるばかり 嵯峨野の寺に めぐらす思い(同上)
久々に 訪ねる高雄 冬なれど 雪も降らずに 晴れ渡るかな(同上)
かわらけの 飛びゆく先も 冬の色 うまく飛ばすに 白けるばかり(同上)
高山寺 明恵上人 月の歌 同じ堂から 眺めてみたき(同上)
嵯峨野でも 気品に満ちた 境内に 離宮時代の 面影偲ぶ(同上)
新たなる 名所となるや 稲庭城 小安に向う 地の利も良かれ(同上)
何に歌う ペットボトルを マイクにし 長男坊の 粋な仕草よ(同上)
アキラ君 弟のように 可愛がり 一緒に遊ぶ 姿忘れず(同上)
熱気球 空虚な町に 浮かぶかな 子供の夢を 結ぶ五月空(同上)
気球には まだ乗ったことは 無いけれど 桜まつりに 乗ってはみたい(同上)
連休が 過ぎて平鹿は 農繁期 昔と同じ 春の営み(同上)
海ならば 子供頃に 親しんだ 象潟のほか 行く海はなし(同上)
電気屋と 仲良くしたり この現場 チームワークが 手戻り無くす(同上)
新たなる 観光名所 模擬天守 二万石には 大きな天守(同上)
少しずつ 作図の腕を 上げてゆき 百万円の 図面屋となる(同上)
千葉県に 未踏の名所 数多あり 社内旅行で 訪ねてみたり(同上)
九十九里 その砂浜と 画すよう 断崖絶壁 銚子に続く(同上)
岬には 崎と埼とが あるけれど 灯台は埼 地形は崎とや(同上)
灯台を 巡る旅に ハマるかな 十三番目は 銚子埼なり(同上)
唄に聞く 塩屋の岬 みだれ髪 美空ひばりを 思い出すかな(同上)
入場の 出来る灯台 貴重なり 塩屋埼にて 十四番目(同上)
その昔 灯台守が 暮らしてた 住居の跡に ヒット曲聞く(同上)
二年余の 現場を終えて 温泉へ 豪華に尽きた 打上げ旅行(同上)
鎌倉に 母とその友 案内し 大仏様に 詣でてみたり(同上)
滅多には 来ることもない 逗子の海 幼馴染の 友に連れられ(同上) 30・40代⑧
スキー旅 男四人で 繋の湯 コンパニオンを マンツーマンにし(横手自宅時代)
女性には 肩に手をかけ ポーズとる 助べえ男の 癖の一つか(同上)
憧れの 北海道の スキー場 友と二人で 夢叶えたり(同上)
両の手に 桜と梅を 抱く如く デレデレしたり アフタースキーで(同上)
鴬宿は 秋田にはない 温泉地 安い宿にて コンパニオン呼ぶ(同上)
九州に 知る人ありて 立ち寄ると 歓待されて 嬉しい限り(同上)
娘さん 博多美人の ひな形か 四十男は 蝦夷の末裔(同上)
甥子らと 遊んでいるか 遊ばれる 素直な心 まだあるうちは(盛岡出向時代)
赤松の 林の中を 散歩する 甥子二人と 温泉に来て(同上)
恥しい 結婚式の スピーチは 手に汗握る 苦手の一つ(同上)
人前で 話すことが 少ないと 緊張感で 言葉も詰まる(同上)
大阪は 寝台列車で 秋田より 訪ねた頃が 懐かしきかな(同上)
付き合いは 十和田ユースに 始まりて 年に一度は 共に旅したり(同上)
札幌の すすき野よりも 雪まつりは 一度は見ないと 旅人の恥じ(同上)
大通り 一年ぶりの 雪景色 移設を願う 時計台かな(同上)
雪まつり 一泊二日の ツアーでも 満足したり カニの味にも(同上)
倒産し 消滅をした 会社でも 歴史はありて 再会をする(同上)
二次会は 遠くかすみし 川反で 久々ぶりに 酒を飲むなり(同上)
社風よく 居心地の良い 会社なり 八年前が 信じられずに(同上)
突然の 気胸に倒れ 入院す これも試練の 一つと知れん(同上)
現場では 親睦を兼ねた 慰労会 度々あると 仕事捗り(同上)
職人に 偏屈者も 多くいて 設備屋泣かす 親方もいる(同上)
見上げれば 記録に残す 監督の 真面目な顔が 思い出される(同上)
焼く量も 半端ではない バーベキュー 忘れられない 盛岡暮らし(同上)
夢時菜の会 十八年の 歳月を 経ても変わらぬ 絆なりけり(同上)
十和田湖を 愛する気持ち 不滅なり ここに青春 夢ありしこと(同上)
大滝で 酌婦呼んでの 豪遊は 最後となりし 四十路を過ぎて(北上出向時代)
北上に 甥子を連れて めぐるかな 最も長く 暮らした街を(同上)
栗駒で 甥子三人 初スキー 子供と遊ぶ 時が楽しく(同上)
単一の ゲレンデ規模は 日本一 温泉もあり 言うこともなし(同上)
背広着て 研修旅行は 泊まりたい 宿に予約し 遊び気分で(八戸出向時代)
十和田湖に 来れば挨拶 欠かせない 乙女の像の 対の女神に(同上)
憧れの 蔦温泉に 一泊し 盛りの紅葉 訪ねてみたり(同上)
夢に見た 十和田ホテルの 宿泊を 叶えて満悦 美酒にまた酔う(同上)
新しき 街に移りて 先ず探す 心の居場所 心地良い酒(同上)
八戸に 二十五年目の 夢をみた 寺の名のある スナックにて(同上)
青森の スキー場を めぐる旅 弘前城に 立ち寄りてみる(同上)
北上に やっと事務所を 開設し 出向やめて 作図に賭ける(北上事務所時代)
気心の 知れた友との 花見会 人脈だけが われを助ける(同上)
久々に 能登屋旅館に 宿泊し 感動したり おせんの温泉(同上)
木造の 三階建てが 林立す 国の宝ぞ 銀山温泉(同上)
盛岡の 庭園めぐり 御薬園 会津若松の 他にあるとは(同上)
早池峰の 登山の前に 参拝す 岳集落の 早池峰神社(同上)
六人で 山に登るは 初体験 期待を胸に 登山口へと(同上)
登山口 到着すれば 雨となり 断念しては 遠野へ下る(同上)
道筋に 荒川高原に 広大な 牧場がありて 見物をせり(同上)
遠野では 名所をめぐり 歩くかな 誰も訪ねる ふるさと村へ(同上)