酒の長句 373首
酒飲んで 霞と消えよ わが胸の 人を恋する 今日の淋しさ(以降二・三十代作)
酒飲んで 歌も詠めずに 寝る夜ほど 我れに空しき 酒はあるまじ
酒飲んで 知らず知らずに また飲んで 人は老いても 楽しみはあり
酒飲んで 後悔するは 狂うほど 乱れるほどの 身に余る酒
酒飲んで 本気になれる 思いなし 酒場の女性 ガードが硬く
酒飲んで リラックスする 夕べこそ 明日の活力 今日との別れ
酒飲んで 喜怒哀楽と 距離を置き ひと時おくる この命かな
酒飲んで 心神喪失 無我となり 死んでもよいと 思う悪酔い
酒飲んで 酔い深まる 空しさを 避けるためには ほろ酔いが良し
酒飲んで 夢の楽しみ また破れ それでも酒は 夢見る糧で
酒飲んで 我れを失う 楽しさは 友と語らう み吉野の山
酒飲んで 調子ずいては 踏み外す 死語に等しき 紳士の掟
酒飲めば 二心消え 正直に 自分見つめる 機会ともなり
酒飲めば 煩わしさも ストレスも 命の水で 潤い流る
酒飲めば 楽しきことより 嫌なこと ふと思い出し 酒不味くなる
酒飲めば 自分の知らぬ 我れもあり 閃く歌や 輝く夢も
酒飲めば 下ネタ話 尽きもせず 無言のままに わが家に帰る
酒飲みて 詩歌を詠むか 味わうか 牧水に似し わが命かな
酒飲みて 乱れる心 横に見て 我れ跪く 遍照金剛
酒飲みて 我れなくしたる 人らしさ 素面に戻り 我れを思えば
酒飲みは 酒に呑まれて 傷ついて 酒に学んで また酒を飲む
酒飲みは みんな同じと 言う店で カモにされても 致し方なし
酒飲みは 酒に倒れて 悔いはなし 酒を愛した 詩人の如く
酒飲みの 妻になるなを 口癖に 女性に言いし 酒を飲みつつ
酒飲みと 馬鹿にされても 酒を飲む 俺の実家は 小売酒屋で
酒飲まぬ 人を猿とも 言うけれど 飲まずに酔える 人は格別
酒飲むも 君かためぞと 言い聞かせ 通いつめたり 君のいる店
酒に酔い 人の物差し 圧し折って 悲しく思う 人の物差し
酒に酔い 女に酔いて 旅に酔い 酔えるものこそ 人生と呼ぶ
酒に酔い 恋に酔うのも 酔いのうち 酔いつ死にたし 人は旅人
酒に酔い ドブに捨てたる 命とて 真に恋しき 芭蕉の世界
酒を飲み 命を縮め 果てるとも それでも良しと 酒を愛する
酒を飲み 心の憂さは 晴れるとも 旅を愛する 思いは晴れず
酒に病み 高野の山に 憧れる 僧侶になりて 酒断とうとも
酒の道 歌の道より 厳しかり 楽しさ辛さ 紙一重にて
酒ありて 今日まで我れは 生きにけり 酔いては酒に 苦しみもせり
酒あれば 女は無くも 楽しかり 古きを想い 明日を悟る
酒ならば 飲めればいいと 思いたり 清酒焼酎 ウヰスキーなど
酒尽きて 我慢できない 月の夜 酒瓶抱え 友は来るかな
酒煙草 やめてどうする この命 五十過ぎたら グリコのおまけ
酒を断ち アル中でない 自己を知り 澄みゆく胸に 山河微笑す
飲むほどに 親しさ増して 情を知る 友に勝れる 宝あるかな
飲むほどに 淋しくなれる 酒もあり 賑わう店で 相手にされず
飲むほどに 喜ぶほどに 悲しかり 我れを諌める 友はいずここへ
飲むほどに 心深まる 付き合いを 酒友と言う 人の喜び
飲む酒の 味は良かれど 飲む者の 心病みては 酒も不味くなる
飲む酒や 二合は薬 過ぎたれば 毒にも変り 暫し悩ます
飲む酒や 待ち人は来ぬ 居酒屋に 今夜は一人 宿に帰るか
飲み過ぎと 我れを諌める 初恋の 人の言葉は 今は響かず
飲みすぎて 苦しい朝の 息づかい 仮死状態に 閻魔の顔が
飲めるうち 酒は飲むべし 歌うべし 旅もするなり 恋もするなり
飲み歩き 銭は貯まらず 色褪せて 世界一周 遠ざかるかな
しみじみと 酒飲み酔える 楽しみを 奪ってくれるな わが恋人よ
しみじみと 酒など飲みて 人生を 語りし友よ 今いずこにか
しみじみと 酒は飲むなり わが家にて 人生などを 考えて見て
しみじみと 酒は飲むべし 盛り場で 移ろう花の 心眺めて
しみじみと 酒飲む店や 恋しかり 気心も知れ 眠り着く店
しみじみと 飲む酒場なく 快く 酔える酒なし 旅路にあれば
しみじみと 古き歌声 甦る とある酒場に カラオケあれば
淋しさを 電話の声に 紛らわす 一人暮らしの ほろ酔いの中
淋しさを 酒に紛らす 暇もなく 酒断ち登る わが欲の上
淋しさを 不幸なことと 見ないこと 草庵の酒 祇園に等し
淋しさを 癒してくれる スナックは 金落とすより 貰う安らぎ
淋しさや 心重たき 三十路かな 酒を飲みつつ 鈴虫を聞く
淋しさや 酒に恋する 旅なれど 旅は寂しく 寂しさも旅
淋しかり ジョッキで飲ます 生がなく どこへ行っても ミニ樽ばかり
酔い醒めて ノートにしたたむ 歌を見る 酔うほど乱る 歌の数々
酔い醒めぬ 朝の苛立ち 二日酔い 快復を待つ 時間は浪費
酔い乱れ 死しても余る 恥かきて 酒に滅ぶか 恋に滅ぶか
酔うほどに 陽気になれる 酒なれど 心の憂さは そんなに晴れず
酔うほどに 落ちぶれてゆく 夕べあり 人生一度 ただ歌を詠む
酔っぱらう ふりしてまた 眠りこく そんな夜あり わが友の店
いつまでも 愛する人が 側に居て 酒飲むことの 楽しさも知る
いつまでも 座り飲みたい 気持ちなる 思い出深き 北上の店
いつまでも とある酒場で 飲むことが 幸せとなり 北上に行く
いつまでも 楽しき酒は 続かねど 楽しさ願う 独り酒かな
いつまでも 二人で飲んだ 楽しさを 忘れられなく 神田へと行く
秋深し 詩情をのべる 友もなく 我れ一人にて 酒を愛する
秋深し 読書に飽きた 夕暮れは アルバム広げ 酒を飲むなり
秋の夜は しみじみ友と 酒を飲み 李白・陶潜 語る楽しさ
秋の夜は 独りグラスを 傾けて 思い出す出す 若き日の旅
人生は 夢よ現よ 幻よ 酒に酔いては 古詩に身を置く
人生を 儚きものと 思うなら ただ酔いしれて 詩を口ずさむ
人生の 酸いも甘きも 知り尽くし やがて酒飲む 李白とならん
人生が 今日一日で 終わるなら やはり酒飲み 旅を追憶
何となく 淋しくつのる 酒もあり 知ると人もなき ふるさとの店
何となく 過ぎた昔を 懐かしみ 酒に暮れゆく 秋の夜長は
何をまた 求めてさすらう 夜の街 いずれは捨てる 酔いの空しさ
何かまた 新しきこと 考えて 酒飲み眠る ふるさとの店
何のため 酒を飲むかと 問う友も 言葉にできぬ 酒の楽しさ
わが欲は 美しきものに 憧れて 旅を好みて 酒吟に尽きる
わが欲を 一つ二つと 捨て去れば 残りしものは 酒と歌と旅
わが酒は 論じて絡み 眠るなり 朝には忘れ 恥辱噛むかな
わが酒は 風流韻事 もろみなり 酒飲まずして 世の毒落ちぬ
わが友の 幸せ願い 飲む酒は 何よりも良き 酒の肴かな
今宵また 酒は孤独を 癒すとも 心を磨く 酒にあるまじ
今宵また 堕落の酒に 身をやつし 空しく過ぎる 世の中の底
今宵また 酔いにまかせて 躓いて 立ち上がりつつ 空しさ去来
今宵また 花の霞を 喰らいつつ 酒に埋もれる 命も良かれ
ほろ酔いて 景色を愛でる 楽しさを 李白は語る 酔歌の世界
ほろ酔いて うたた寝をする 気持ち良さ 夜の帳の 降りる時まで
ほろ酔いて 人恋しかり 独り身の 初夏の風吹く 川反をゆく
様々に 趣変る 酒を飲み 憧れ強し 吉野の花見
様々に 趣変えて 飲む酒も 酔い潰れては 酒も迷惑
様々な 飲み屋の椅子に 腰掛けて 浮世の酒と 思う切なさ
楽しきは つまらぬ酒と 思いつつ 酒に呑まれず ほろ酔える時
楽しきは あらゆることを 知っていて 知らんふりして 酒を飲む時
楽しませ 客を愛する 店ありき その真心に 財布は乾き
気心の 通じる友と 飲む酒は 楽しく飲みて 活力となる
気心は 天気の如く 移り行く 酒酌み交わし 気脈深めん
気がつけば 飲むこと永し 甘え酒 酒断ちて知る 酒の善し悪し
一年で ビールの主流 変化して 何処の飲み屋も 銘柄を聞く
一見の 客をも思う 真心に 心打たれて 今夜も来たり
一杯の 酒にも酔える 時があり 為すべきを為し 安心する時
もう一杯 一人飲む酒 寛げる 過ぎし思い出 肴にしつつ
もう一杯 もう一杯と 酒を飲む 李白に負けぬ 酔い心地かな
懐かしき 故郷の酒を 飲み干せば 緑したたる 田畑浮かぶ
懐かしさ 溢れるほどに 幸せの 酒は流れる 過去から今に
今日もまた 心の膿を 憎みつつ 痛み抑えに 酒注ぐなり
今日もまた 楽な方へと 逃げてゆく 四合の酒と 女遊びに
これ以上 煮えてはならぬ 湯豆腐と 酒は呼吸で 飲むべかりけり
これ以上 飲むぬと言うも 口惜しく 深夜の酒を 花に捧げん
とある店 客を騙して 酒飲ませ 身ぐるみ剥がす やくざ稼業を
とある店 客を大事に 酒飲ませ 猫の手借りる 繁盛ぶりで
酒場では 猿がマイク 持つ如く 飽くなく歌う 声耳障り
酒場では 助べえ話に 花が咲き マンネリ感ず 田舎の暮らし
振り向けば 酒を愛して 酒を褒め 酒に溺れて いま無一物
振り向けば 恥かしさのみ 思い出す 酒に呑まれて 酒に潰れて
思い出を 酒の肴に 味わえば つのる孤独に 秋風ぞ吹く
思い出を 振り向き酔える 酒もあり 真実一路 生きる楽しさ
独り酒 何杯飲んでも もとの味 グラスを下げて 机に向う
独り飲む 酒場の酒は 憂鬱で 自宅に帰り しみじみと飲む
目の玉が 飛び出るような 高い酒 生涯一度 飲んでも酔えず
目が据わり 酒に呑まれる 醜態は 酒飲み人の 姿に非ず
二合酒 今日も旅寝の 友として まだ見ぬ果ての 山を夢見る
二日酔い 病人並に 目は虚ろ その空しさに 我れは耐えるか
八合は 何とか飲めると 思いつつ 独り飲む酒 二合が限度
八日間 病に臥して 酒飲めば 生きているなと 感じる花見
欲すれば 今宵気まぐれ 酒飲んで 酔いに任せて 蒲団に沈む
憂さもなく 平常心で 飲む酒は 適量なれば 妙薬となり
良き街で 良き酒飲みて 良き友と 一夜明かして 語る楽しさ
面白や 気取りて椅子に 腰掛けて 飲まずに口説く 色男かな
茶代わりに せんぶりを飲む 朝もあり 酒に疲れた この胃のために
ひと回り 歳の離れた 恋などを 悲しく思う 泥酔の朝
昨晩が 何が何だか 分からない 酔いに目覚める 朝の憂鬱
点滴を 吊るが如くに 瓶を下げ 飲み干す酒の 命なるかな
捨てるべき 瓶を集めて 数滴の 酒を求める 酔いの貧しさ
病む時は 五臓六腑を 労わって 峠過ぎれば また酒を飲む
夢うつつ 詩の一編を 酒飲んで 呑まれるままに また一編を
ホラを吹き 後味悪き 酒もあり わが振舞いの 愚かさを見て
友来たり 何がなくても 酒あれば 秋の夜長も 飽くことはなし
おぼろげに 月は満ちたり 我れ一人 帰る宿をも 定めず飲みし
空腹に 染み入る酒の 心地良さ 一合足りず 二合は多し
乱れても なおも恋しき 君なれど わが夢と遠く また酒を飲む
今朝もまた 心の珠を 磨きつつ 夜には酒に 乱れ散る珠
奢れては ならぬといつも 思いつつ 人を見下す 酔いの貧しさ
日は早く 追いかけゆくも 力なし 酒飲むだけの 秋の夕暮れ
しばらくは 禁酒宣言 リフレッシュ 身を改めて 新たな酒を
語らいの 楽しさ辛さ 紙一重 酒増す毎に トラに豹変
胸詰まり 喉を通らぬ 酒もあり 感動をする 本などを読み
花散りし 土曜の夜は 家に居て 酒を飲みつつ 星を観測
哲学書 酒は馴染まず グラス下げ レコードとめて 集中したり
限りなき 心の向上 願いつつ 酒に呑まれる 嘆きも多し
嬉しさに 涙流れる 酒もあり 心の通う 人に触れ合い
しがみつく サラ金が世に ある限り 今宵も借りて また酒を飲む
はらわたに 染み込むほどに 寂しかり 友死し夜の 枕辺の酒
幸せは 心静かに 酒を飲み 歌の一首も 閃きし時
すやすやと 眠れる店は ありがたし ママの横顔 微笑むばかり
マサカリで 二つに割った 顔をして 酒飲むだけの 人もありけり
ブスばかり どっと来たりし 居酒屋に 困り果てるは 目のやり場かな
ごくごくと 喉を潤す 命水 夏はビールに 勝るものなし
哀れかな 深夜の街に 一合の 酒を求めて さまよえる時
本を読む 気力も薄れ 酒を飲む 酔いては思う 酒飲みの道
美女集う 銀座の夜の 華やかさ 山河思うと 白けるばかり
喉越しの ビール飲みたし 五月陽に 終日働き 思うことかな
普段着で 持て成す友の 有り難さ 肴はシシャモ 酒はホワイト
あてもなく ネオンの街を 彷徨える 根無し草とて 夢はありけり
木偶の坊 みたいなママが 立っている 気遣い無用 とあるスナック
泥酔し 理性は消えて 破廉恥に 振る舞うのちの 朝の悲しみ
下手な唄 唄うことこそ 恥しき カラオケ避けて 酒を楽しむ
自分だけ そっと楽しき 顔をして 迎合せずに 酒を愛する
他愛ない 話に酒宴 尽きぬとも 毒にならぬは 下ネタ話
山小屋で 気の合う友と 飲む酒は 雰囲気変り スルメが香る
安逸を むさぼり過す 人たちと 飲む酒貧し 語ることなく
忘れ得ぬ 狂気もありて 酔いの中 その酔い樣が 今は懐かし
梅雨の夜 熱燗も良し 冷やも良し 一人静かに 物思う時
書があれば 地獄の旅も 飽きもせず 酒あるならば 地獄も良いと
焼酎に 浮気しつつも 湯豆腐に 清酒無ければ ただ淋しかり
苦があれば また楽ありと 信じつつ 愛しき人と 酒を飲むなり
字は乱れ 歌は途切れて うたた寝る 酒飲むだけの 夜は悲しき
刻々と 今日という日は 過ぎてゆく ペンは進まず 諦め酒を
常連が 集いて淋し 角打ちは 一見客は 戸外に限る
哀しさは 酔いに任せて 欲を張り ネオンの街に 消えて行く時
盛り場の 景色は同じ 銀座でも 次元の違い 酒の酔い味
田舎にも ネオンの灯り 華やかに 夢かと思う 夜の花園
騒ぐだけ 騒いで飲んで 帰る客 彼も酒飲み 我れも酒飲み
スナックは 帰るあてない 客ばかり 集いて飲める 我れも一人で
トイレまで 聞こえるほどの 声を出し 笑える歌は 酔いを励ます
手洗いの 花瓶の花が 変るたび 心ときめく 行きつけの店
華やかさ トイレの中も 咲き乱れ 我れを酔わせる ビクトリーかな
真心を 酔狂の中 感じたり トイレに生けた 一輪の花
夕べ見た ママの笑顔が 恋しくて また飲み歩く 北上の夜
誰を見て 酒の肴に すればよい そんな酒飲む 北上の夜
ママの居ぬ 店は淋しく 来る客を 遠ざけてゆく その別れかな
キャバレーの カウンター隅で 飲む酒は 昔ながらの ホワイトホース
通い慣れ 思い出深き 店なれど ドアの扉に 迷う年月
浮かれては いつもならぬと 思いつつ 足が浮き立つ 川反の夜
冷やかに わが身を見れば 淋しさが ふと湧き出る 深夜の街に
気持ち良く 酔いたいために 投げ無しの 銭をはたいて 買う四合酒
陽が暮れて 労をねぎらう この酒に 生きる実感 ああ旨きかな
君のため 空けるたる椅子に 君は来ず 一人静かに また酒を飲む
恋に病み 疲れし胸の 傷跡を 酒に洗わば 旅ぞ浮き立つ
冷やかな 人の視線が 気にかかり ゆっくり飲めむ 我れ哀れなり
初めての 店は寂しき 会話なく 飲み干す酒も 辛口のよう
旅路には キリンヒールの 少なさよ 一年前は アサヒは三位
かにかくに ふるさとの酒 恋しかり 天の戸・館の井 朝乃舞など
長しえに 秋田の酒は 恋しかり 産湯は酒の ふるさとの味
ふるさとの 大吟醸の 酒飲めば 仄かに匂う 父の優しさ
風邪をひき 大蒜食べて 寝る夜は 口が渇いて また酒を飲む
談笑し 気持ち楽しく 飲む酒を 中断させる 友の振舞い
不味い酒 先ずは顔に 現れて 呑まれて示す 理性の欠如
この孤独 ずっと愛して 過ぎるよう 秋の景色の ひと瓶の酒
失業し ヤケになる友 その嘆き 俺と同じと 居酒屋で聞く
繰り返す 我れを忘れる 二日酔い 無益な時間 無駄な人生
ふわふわと 舞い行く蝶 追う如く 酒を飲みつつ 陶潜慕う
ホワイトが 角瓶に変る 出世かな されどローヤル まだまだ遠し
ぺこぺこと 頭を下げて 酌をする 酔わざる酒は 癪に障るや
有れば飲む 無ければ飲まぬ 酒飲みに 成ってはみたし 酒を愛せば
空を知り 空を思わず 酒を飲む この世の春に 地獄は見えず
ヘネシーの 琥珀の底に ふと見ゆる 高値の酒に 微笑む自分
塩辛と 胡瓜と茄子の 漬物は 昔と同じ 酒の友なり
モミアゲが 短くなりて 懐かしむ カクテル酒場 青春はあり
角瓶の 琥珀の中に 映る顏 角張る個性 よく見えしかな
シトシトと 秋雨ふれば 鈴虫も シンシンと鳴き 酒は深まる
過去ばかり 振り向いている 寂しさを 酒に求めて 晴れる日はなし
死後のこと あれこれ思う 空しさよ 酒を楽しみ 旅を愛する
夜も更けて 酒にたわむれ 生きんとす 二十数年 美酒を忘れず
東京の ファジィの店は 忘れ得ぬ 殆ど混まず 心地良く酔う
酒飲んで 気が高ぶるは 何故なのか 酔いで本音が 解放されて(以降四・五十代作)
酒飲んで 乱れる事は 今はなし 酒を楽しむ 心定まり
酒飲んで 大声上げて 騒ぐ馬鹿 避けたいものだ 気まずい酒は
酒飲んで 調子ずいては 訪ね行く 雪降る時も 一乃ひとすじ
酒飲んで 思想を語る 時代過ぎ マルクス主義は 若き語らい
酒飲んで 自我を離れて 無我となり 死んでゆくかな 花の下にて
酒飲んで 語り尽きせぬ 風雅かな 西行の和歌 芭蕉の名句
酒飲んで 煙草を吸いて 四十年 まだ生きている 命の不思議
酒飲んで 夢と戯れ 夢覚めて 生きる楽しさ 死する哀しさ
酒飲んで そのまま死ねる 幸せを 本気で願う 明日の支払い
酒飲みの 末路の哀れ 知りつつも 酒は哀れと 人に語らず
酒飲みの 仲間ばかり 集まった 八戸以来 鹿角の現場
酒飲みの 礼儀は一つ 笑顔なり 見知らぬ客に 心を開き
酒飲めば 戦争話 繰り返す 父の青春 知る不惑かな
酒飲めば 自慢話か 愚痴話 人語るより 先ず花を見よ
酒飲みは 一人よがりに ならぬよう 外で飲む時 慎み深く
酒飲まぬ 八十年の 下戸よりも 酒を楽しむ 五十の命
酒を飲み 馬鹿やり過ぎて 懺悔せば その度ごとに 消える自意識
酒を飲み 歌詠むことを 楽しみに 生きてもみたり 地球の上で
酒に酔い 胸ときめかす 熟女あり 夢かうつつか 目覚めて一人
酒に逃げ 酒にまかせて 独り言 何とかなるさと 目覚めて辛し
酒と酒 争うことの 空しさを つくづく知りて されげなく去る
今宵また 酒を楽しみ 沈む身を 哀れに思え 酒飲まぬ人
今宵また 自己を振り向き 飲む酒は 過去の過ち 忘れ得ぬため
今宵また 酒に逃れて ただ一人 死ぬに死ねない 借金暮らし
今宵飲み 心の憂い 晴れるとも またぶり返す 明日への不安
今夜こそ 酒を飲まぬと 思えども 飲まず眠れぬ 習慣哀れ
一人飲む スナックバーの カウンター ふと思い出す 読みかけの本
一人飲む 酒は五十 境とし 読書三昧 旅の間に
一人飲む 酒場の酒は 淋しくも 家で飲むより 刺激が多く
一升を 二夜であける 別れあり 待つこと五年 しこりは消えて
一杯が 三杯四杯と なる前に 二杯でやめて 帰る自宅へ
一合で 飲み控えるは 無理がある 二合と決めた 条件反射
盃を 重ねるほどに 調子ずく 自制に欠けた 酔いの哀れさ
盃を 重ねるほどに 辛くなる 不惑となりて 孤独深まり
盃に 月を映して 飲め干せば 月下独酌 李白の心
飲み屋にて 一人二人と 店を出る それを待っている 客もありけり
飲み足りず ふと外に出る 赴任先 秋の夜長に 罪はなけれど
飲み始め みんな等しく 恵比須顔 空気変われば おおトラ一人
酔いもせぬ 酒を飲みつつ 夜も更ける 人に楽しき 思いは酔いで
酔っぱらう 自分の姿 面白き 駄洒落に笑い お洒落に泣いて
酔っぱらい 感情入れず 眺めれば 小野小町は 若返るかな
他愛ない 話しの端に 同調す 仕事仲間と 酒を飲む時
他愛ない 話しの中に 埋もれて 一夜が過ぎる 酒の侘しさ
淋しさを 酒に委ねて 暮らしても 切ないだけの 東京の夜
淋しさを 感じる意識 消え失せて 酒への思い 大きく変わる
世の中の 中流層に 肩並べ 新橋寄りの 銀座に通う
世の中の 不平不満を 語り合う ママは友達 早や二十年
ホステスが 客だと思う 店多く 主客転倒 気遣うばかり
ホステスは 理解しがたき 夜の蝶 貢ぎ貢がせ 思い思わせ
川反で 芸者を挙げて 飲むことが 秋田生まれの 夢の一つで
川反に 行かなくなりて 二十年 とある居酒屋 有るや無しかや
片町に 心安らぐ 店見つけ 一夜の夢に 酔いしれるかな
片町は 夜は暮れない 夜となり 半年ほどの 美酒に終止符
行く店も 世代交代 若返り 足は遠のき 寄り道をせず
行く末は 何となるかは 気にかけず 一日結ぶ 酒を楽しむ
春は海 夏は渓谷 秋は山 冬は温泉 いずれも酒が
春近し 飲んで歌って バタンキュー 村下君は プロの歌声
秋雨に 物憂くなれば 風呂沸し 酒を飲んだり 日曜の朝
秋の朝 三日続けて 二日酔い 休めぬ週の 仕事憂鬱
苦かりし 酒飲む時の 淋しさは 話し相手が 誰もいぬ時
苦しみを 酒に紛らし 生きている 借金漬けに 浸かる毎日
人生は 何はともあれ 酒飲んで 寝るが第一 明日のために
人を待つ 夜の屋台で 暇つぶす ホルモン煮込み 一合の酒
わが酒は 花鳥風月 友として 人たることを 忘れ飲む酒
ふと歌い 昔に帰る 楽しさを 知る人ぞ知る 侘び酒の中
弦のない ギター取り出し 酒飲めば 中途半端な 自分に涙
たわむれに 酒を飲みつつ 歌を詠む 自己満足の 日々も良かれと
禁じても 酒に破れる 恋心 一度限りの 命淋しく
物心 ついた頃より 酒があり 李白・牧水 酒の神様
違和感が 空気の中に 立ちこめる 若者言葉 カウンター超し
満席の 馴染の店の 片隅に ふと懐かしむ 友の横顔
気を良くし 飲んだ思い出 忘れ得ぬ 一期一会の 人の交わり
こんなにも 淋しき思う 店もなし 駄洒落も言えぬ 酔いの静かさ
丁度よい 酔い心地となり 床に就く 明日の仕事 イメージしつつ
振り向けば 銀座で飲んだ 思い出は 酒人生の 上位にランク
また酔いて 広辞苑は 枕なり 夢と消えゆく 言葉のすべて
スナックに 通いてみても 広がらぬ 人間の幅 人脈の幅
カラオケに 高田渡の 歌ありて 感激したり スナックみきで
哀れかな 公衆トイレで 待つ如く ママ一人見て 店で酒飲む
新橋と 神田の違い ふと見たり 新橋辺り 屋台が多く
屋台でも チャイナ女性が おでん盛る ここまで来たか 新橋の街
独り身の 楽しき友は 樽の酒 一斗飲み干す 李白の心
胃袋に 穴が空くほど 酒を飲み それでも求む 酔狂の夢
少しずつ 喉や胸は 良くなりて また忘れるは 暴飲した日
幸せは 独り静かに 酒を飲み 杜甫や李白の 詩を詠みし時
いい酒を 飲んでしまった 後の酒 殆ど水で 味気ないもの
ぎこちない ホステスと飲む クラブにも 夏から秋へ 移る色あり
浮ついた 心を抑え 飲む酒は 茶道の如く 酒道ありしと
聞きもせぬ 酒酔い人の 独り言 夕べの顔は 深夜にくずれ
東京で 日本酒愛す 人が飲む 秋田心は 地元の酒で
実りある 話しに心 時めかせ 良き酒飲みし 八戸の夜
乾杯と 手締めする時 一丸で 前後バラバラ 日本の酒宴
馬鹿野郎 飲んで歩いて 憂さ晴らし ねぐらに帰る カラスの如く
雑音が 心の窓を 通過する カウンター隅 一人座れば
現役の 上司の急死 ただ涙 ひと月前は 酒を飲んだのに
自らを 知らんとすれば 友に訊き 友を選ばば 盃重ね
盛り場で 悲喜こもごもの 酔いを見る 人それぞれの 憂いを抱え
その昔 夕子と夏子 同伴し どっち付かずに 飲んだ夜もあり
良き友は 良き酒持ちて 迎え入れ 悪しき友には なお良き酒を
あるがまま 心の内を さらけ出し 友と語らう 酒は楽しき
もう少し 大人らしくと 思う時 酔うたび毎に 子供の気持ち
腹の虫 何処へ出てゆく 今日の酒 口か手足か まだイスわるか
しみじみと 秋の夜長は 酒飲んで 羽根を伸ばせば またカモにされ
四・五年は 意気投合す 友もなく 一人淋しく 酒をまた飲む
雨を聞き 酒飲む人は 風雅なり 梅雨には梅雨の 趣あれば
ゆっくりと 歌って飲める ひと時が 恋し楽しき 一乃の灯り
夢破れ 酒に逃れて 思うこと 一人よがりの 恋であったと
この店で 心が変わる 酒を飲む この楽しみを 酔狂と言う
ママ一人 目当ての客は 星の数 星にもなれず はや三十年
ワンパターン 屋台居酒屋 カラオケバー 千鳥足でも ラーメン店に
ブス美人 差別しながら 酒飲んで 差別をされる クラブの払い
異次元を 彷徨うような 夜の店 芭蕉を語る 人は皆無で
歌もなく 酒場で暮れる 夕月夜 今宵の客は 我れ一人のみ
夕べ見た 酒の楽しみ 今宵なく 淋しきままに 酔い人は行く
ぐいぐいと 日本酒飲める 健康を 維持していたい 末期の日まで
若者が どっと押し寄せ 春来たり 滅多にないと 大湯の飲屋
古都と言う 鹿角の店で 酒を飲み ふと口ずさむ 「加茂の流れ」を
品のある 古都と言う店 忘れ得ず 花輪の夜の 心地良い酒
快く 歌う店なく 気持ち良く 飲む店もなし 鹿角を離れ
身に付いた 酒と煙草は 捨て難く 夢の中でも 旨そうに飲む
日曜日 晩酌しつつ テレビ聞き 今日の山旅 プリントアウト
友情は 拍手と握手 尽きぬ酒 歌い踊るは 万国共通
十七週 続けた登山 ストップし ヤケ酒を飲む 哀れな週に
入れ替わり 立ち替わり来る 客足に 気を取られては のんびり飲めず
酒飲んで そのまま死にたい 夜もあり 仕事に疲れ 旅にも疲れ(以降六・七十代作)
酒飲んで 李杜と交わる 喜びを 風雅と言わず 何に譬えん
ほろ酔いて 眠れる日々の 幸せを 自己満足の 法楽という
ほろ酔いて ここに人生 尽きるなら 良かれと思う 安楽死かな
酔ったまま あの世に行けば 本望と 死に水ならぬ 大酒を飲む
酔えばいい ただそれだけの 酒の味 一合百円 鬼ごろし良し
六十路過ぎ 二日酔いとは 縁遠く 週一日は 休肝日とす
秋田には 相も変わらぬ 馬鹿男 羽目を外して 酒飲むばかり
ほどほどに 飲む酒楽し 夜の街 色恋ざたも 忘れ忘れて
新しき 登山シューズを 買い求め 夜の酒場を 試し履きする
百薬も 限度を過ぎれば 毒薬 酒は適量 飲むが楽しき
アル中と 呼ばれてみても 仕方なし 真実一路 酒が友なり
貸切で みきで飲む夜 閑散期 二月半ばの 浅舞の町
懐かしき 久美という名の また聞きて カラオケ歌う みきの風景
大納川 昔の酒は どこにやら 遠き昭和と 思うあの味
旅に酔い 詩歌に酔いて 酒に酔い 我が人生は 三酔を行く
鬼ごろし 水より安い 酒を飲み 三年すぎる 年金暮らし
ロイヤルが トリスに替る この落差 年金暮らしは 酒若返り
一つこと 成し遂げてみて 満足す 満足こそが 美酒の楽しみ 思い出の 一番深い ウヰスキー ホワイトホース 初の舶来