ワールド・ベースボール・クラシックが始まったのは、平成18年(2006年)の3月で、16ヶ国が参加して開催された。野球におけるワールドカップで、世界一を決める一大イベントとなった。第1回大会は、王貞治氏が監督で、投手では松坂大輔選手や上原浩治選手、野手ではイチロー選手や新井貴浩選手などの活躍が脳裏を過る。第2回大会は、監督は原辰徳氏で、投手は田中将大選手やダルビッシュ有選手、野手ではイチロー選手や阿部慎之助選手などの活躍で2大会を連続制覇した。しかし、第3回大会は、ドミニカ共和国が優勝して日本は3位、第4回大会は、アメリカ合衆国が優勝して日本は3位に終わった。そして迎えた今年(2023年)の第5回大会は、劇的な勝利で優勝を飾ったのである。
アメリカ合衆国は初めてとする強国は、全員が現役大リーガーで、日本は大谷翔平選手、ダルビッシュ有選手、ヌートバー選手と、今シーズンから大リーガーへの移籍が決まった吉田正尚選手の4人だけである。しかしながら日本のプロ野球のレベルは高く、潜在的な実力は過去2回の優勝で示されている。今回のトーナメント戦では、「侍ジャパン」が圧倒的な強さで4連勝し、準々ではイタリア共和国を圧勝して、アメリカ合衆国のフロリダ州マイアミに乗り込むのである。その様子は朝から晩までテレビで放映され、ウクライナ共和国での悲惨な戦いから日本中がWBCの平和な戦いに切り替わった。
準決勝のメキシコ合衆国とのリーグ戦では、先発の佐々木朗希選手(ロッテ)がホームランを打たれ3点を失うものの、最終回に不審にあえいでいた村上宗隆選手(ヤクルト)がヒットを放ち、俊足の周東啓祐京選手(ソフトバンク)がホームベースを踏んで逆転した。メキシコ戦の平均視聴率46.5%と記録したとされ、スラッガーの村上様が本領を発揮したのである。
翌日のアメリカ戦との決勝戦では、先発の今永昇太選手(ベースターズ)がホームランを打たれたものの、直ぐに村上様のホームランとヒットで逆転する。4回には、岡本和真選手(巨人)のホームランで追加点を加える。8回表にダルビッシュ有選手がホームランで1点を失うが、9回表には大谷翔平選手がストッパーで登場し、エンジェルズの同僚である強打者・トラウトを三振に仕留める名勝負を演じた。大谷翔平選手は、グローブを捨て帽子を脱ぎ、勝者の雄叫びをあげた。侍ジャパンは7人の投手リレーで大リーガーの打者を2点に抑え、14年ぶりの優勝を果たしたのである。
今回のメンバーは、栗山英樹監督が北海道日本ハムファイターズ時代に育てた大谷翔平選手とダルビッシュ有選手の活躍が光る。監督は大谷翔平選手通訳・水原一平氏を介して、日系人大リーガーのヌートバー選手(カージナルス)を選出した。これは予想外の加入で、その活躍に対する日本でのフィーバーぶりは異常と思えるほどであった。今回の主演は大谷翔平選手で、助演はダルビッシュ有選手、ヌートバー選手に他ならない。
昨年のサッカーのFIFAワールドカップは、日本は9位となって大活躍し、日本国内の経済効果は163億円であったとされ、今回のWBCでは、約600億円の経済効果があったと言われるで、その影響は大きい。また、WBCでのイチロー選手の活躍に大谷翔平選手が憧れたように、今回の大会も野球少年に与えた影響はまた花開くことになるであろう。