登山日記1 鳥海山(新山) 2,236m 令和05年09月24日(日) 晴れ
走行距離: 象潟~鉾立~象潟~金浦IC~本荘IC~老方~大沢~沼館~横手市内 128㎞
登山口からの標高差: 1,086m、登頂距離: 7.2㎞
登山口: 鉾立五合目駐車場(標高1,150m)、上り外輪山コース、下り千蛇谷コース。
4:06登山開始、5:25賽の河原着、5:42御浜着、6:40七五三掛着、7:52行者岳着、8:18七高山着、9:20新山着(5時間14分)
9:25下山開始、9:30御室小屋着、10::50七五三掛着、11:46御浜小屋着、12:20賽の河原着、13.20駐車場着(3時間55分)
登山所要時間: 9時間14分、全歩行距離 14.3㎞。
名所: 賽の河原、御浜小屋、御田ヶ原、八丁坂、七五三掛、文殊岳(2005m)、伏拝岳、行者岳(2159m)、七高山(2229m)、胎内くぐり、新山、大物忌神社(御室小屋)、千蛇谷、展望台、見晴台、鉾立ビジダーセンター、稲倉山荘、さんねむ温泉。
旅費: 4,080円(朝食代510、トイレ代100、手拭・バッヂ1100、入浴料450、ガソリン代1920)
自宅に引き籠って早1年、金銭的な理由で山には殆ど登っていない。しかし、毎朝遥拝している鳥海山には登らないといけないと思い登山を決意した。本来であれば、五月連休の春スキーシーズン、矢島口の祓川コースから七高山へ登ってスキーで一気に滑るのが最高である。チャンスを逃してしまい、象潟口の鉾立コースを登ることにした。鳥海山の御来光を最近は見ていないので、早朝から出発することを計画した。
最近は年金以外の収入がなく、宿泊は車中泊が殆どとなっている。登山の前日は、定番となっている「道の駅象潟ねむの丘」で車中泊した。最近は、私のように乗用車に車中泊する観光客が多く、駐車場のスペースは半数以上が停まっていた。深夜の2時頃に目が覚め、鉾立の駐車へと向うことにした。鉾立は駐車場も登山者の車が多く停められていて、オフシーズンになっても登山者は多いようだ。
久々にヘッドライトを付け、午前4時頃に登山を開始した。他にこの時間帯に登る登山者は多く、満天の星座と、象潟の夜景を眺めながらの登山を楽しんでいるようだ。登山開始から1時間半ほど過ぎ、賽の河原に到着した頃は明るくなって来て、御浜小屋の七合目に到着する日が照っていた。大概の登山者は、ここで鳥海湖を眺めながら休息するが、山小屋は夏季期間のみ営業でトイレも閉ざされていた。鳥海ブルーラインの営業中は、山小屋も運営すべきと思う。山形県の大物忌神社経営の山小屋は、サービス精神に欠け、施設も古く汚らしい。北アルプスなどの洗練された山小屋に比べると、雲泥の差があり、早く秋田県に返還して欲しいものだ。すると、祓川ヒュッテのような一般的な山小屋が誕生することになるが、現状のままの鳥海山では世界の登山者からは愛されない。 御田ヶ原に到着すると、高山植物では僅かにチョウカイアザミがに咲き残っていが、最近ではウゴアザミに名前が変わってしまったようだ。今の季節は、エゾオヤマリンドウが鮮やかな紫色の蕾を膨らませて見事である。
七五三掛に到着し、外輪山コースか千蛇谷コースか迷っていたが、以前とは逆に上りを外輪山コース、下りは千蛇谷コースを選んだ。新山の山頂を目指すのであれば、千蛇谷コースの方が最短であるが、山の楽しみは稜線や尾根歩きに尽きる。文殊岳から幾つかのピークがあって、そこからの展望が素晴らしい。西南の日本海には庄内平野と月山、西北の日本海には本荘平野と男鹿半島、西の洋上に平坦な飛島が見える。外輪山のピークである七高山に到着すると、東側の横手盆地は雲海に包まれていたが、その果てには秋田駒ヶ岳や岩手山が微笑んでいた。鳥海山の一等三角点は、七高山にあることから実質的な山頂として崇めている。ここは江戸時代中期以前は秋田領内で、不当な幕府の裁判の結果が現在の歪んだ県境に及んでいるのである。
七高山からは鞍部を下り新山を目指したが、尖がった噴石の岩塊は危険な個所もあって好きにはなれない。一応は鳥海山の最高峰と言うことで、この日も多くの登山者が山頂を目指していた。鞍部から山頂までは、100mほどの急登が続き、右往左往して到着した。山頂き3人ほどが立てる場所しかなく、写真を撮影してすぐさま下った。山頂には霊山では不可欠な石祠がなく、胎内くぐりの中に石祠が建っている。 何とか大物忌神社の拝殿が建つ、御室小屋で休息した。最後の食糧となったカレーパンを食べた頃には、9時半頃になっていた。登りだけで体力は消耗し、下山を考えると不安になって来る。千蛇谷は万年雪であったと思い、念のためアイゼンを持参していたが、不要のようであった。谷底から分岐点までは急登が続くのが難点で、気の抜けない登山道である。やっとの思い出で分岐点が見えて来た時、下ろうとする若者に道を譲ろうとして転倒してしまった。登りの登山者は疲労が激しく、上り優先で道を譲られると、せつかされた気分となって、良いものでもない。以前も谷川岳の尾根で同じように転倒したこともあって、決して谷側には寄らず、山側に避けるべきと痛感した。
七五三掛の分岐で、ベンチに一人で座っていた若い女性の横に私も座った。同時刻に出立した女性で、聞くと秋田市内住む大学生と言う。賽の河原までは私が先行していたが、御浜小屋からは彼女が先行し、七高山と新山ですれ違ったので、ペース的にはほぼ一緒である。10年ほど前は、山頂まで3時間を切った時もあって、今回は2時間以上もオーバーしてしまった。その後は、彼女の姿を見ることもなく、後退を余儀なくされた。 御浜小屋では、足の爪先に痛みを感じて登山靴から地下足袋に履き替え、登山靴よりは楽になった。しかし、太腿の筋肉痛だけは如何ともしがたく、ゆっくりと降りるだけであった。駐車場に到着した時は、登山所要時間は9時間14分と、3時間以上も自己ベストを下回ってしまったのはショックである。1年近くも本格的な登山をしていなかったのが原因で、最低でも5時間以上の登山を月1度は経験しないと、体力の維持は不可能と感じる。下山後は、象潟の「さんねむ温泉」に入浴し、少しでも体を癒すことができたのが嬉しい。ここは、道の駅の展望風呂ほどは混雑していないのが良く、この日も貸切状態であった。
「下山後の 温泉一番 遅き秋」
鳥海山七合目の鳥海湖
鳥海山新山(最高峰)
登山日記2 栗駒山(須川岳) 1,626m 令和05年10月18日(水) 晴れ
走行距離: 横手~醍醐~十文字~増田~東成瀬~須川高原~東成瀬~真人~明沢~横手市内 119㎞
登山口からの標高差: 501m、登頂距離: 4.9㎞
登山口: 須川高原駐車場(標高1,126m)、上り産沼コース、下り天馬尾根コース。
8:55登山開始、9:19賽の碩着、9:46名残ヶ原着、10:00苔花台着、10:38産沼着、11:28栗駒山頂着(2時間33分)
11:40下山開始、11:55天狗平着、12::40鞍部着、13:36秣岳着、14:28登山口着、15.15駐車場着(3時間35分)
登山所要時間: 6時間20分、全歩行距離 18㎞。
名所: 大日岩、温泉神社、おいらん風呂(蒸かし湯)、賽の磧、名残ヶ原、苔花台、三途の川、産沼、山頂、駒形根神社嶽宮、天狗平、秣岳、須川湖、栗駒山荘。
旅費: 3,820円(昼食代800、入浴料800、バッヂ440、ガソリン代1780)
昨年の秋、秣岳をピストンした時から栗駒山までの縦走コースを歩きたいと願っていた。晴天の日を待って決行したが、夜明け前の出発が困難となって、美しい夜空の星を眺めることが出来なかった。8時半頃に須川高原駐車場に車を停めると、続々と登山者が出立して行く。のんびり登ろうと考えいたので、久々に賽の磧を訪ねることにした。 大日岩と温泉神社に一礼して須川高原温泉の敷地から登山を開始すると、おいらん風呂に向う湯治客を追い越した。何度となく、おいらん風呂を眺めて来たけれど、蒸し風呂やサウナ風呂は好んで入りたいと思わないので未だに入浴していない。
20分ほどで賽の磧に到着したが、荒涼とした火山景観は奇勝である。紅葉黄葉の盛りで、仏像のような奇岩怪石に色を添えている。賽の磧のハイキングコースを進むと、須川高原に戻る気配を感じたので途中で引き返し、名残ヶ原から産沼コースに出た。苔花台では、メインルートであった須川コースが閉鎖されたままで大変切なく眺めた。
三途の川の可愛らしい渡渉を終えると、厳しい岩石混じりの急登が続く。小さな産沼に着いて、小休止した。ここまで上ると、樹林帯から笹とハイマツの景観に変化する。左側方向には、栗駒山で唯一の山小屋である笊森避難小屋がある。山小屋は山のオアシスで、必要不可欠なものであるが、北東北の山々は山小屋が少ない。
産沼を過ぎると、見晴らしの良い景観が続き、目の前には栗駒山直下の登山道がくっきりと浮かび、振り向くと紅葉に染まった山腹が広がっている。11時半頃、山頂に到着すると、100人近い登山者が陣取っていて、初めて経験する賑わいである。圧倒的に宮城県側のいわかがみ平からの登山者が多く、裾野の紅葉が実に美しい。握り飯を食べながらコースタイムを見ると、2時間33分となっていた。3年前に1時間34分で登ったことを考えると、名残ヶ原から1時間42分は手痛いタイムで、脚力の衰えは顕著である。 山頂附近の紅葉は終っていて、高山植物も殆ど咲いていない。下山を開始して15分、天狗平に到着した。ここは須川コースへの分着点で、令和元年(2019年)のシーズンから通行禁止となっている。須川コースは片道約3.8㎞の最短コースで、昭和湖のロケーションが良く、唯一のトイレも設置されていた。天狗平からは、虚空蔵山への登山道もあって、ここに避難小屋でもあったら最高と思う。いずれはお室、虚空蔵山は縦走したいものである。
天狗平からは、天馬尾根コースと称される秣岳経由の縦走コースが素晴らしい。秣岳までは、3つのピークが見え、天空の散歩道と呼ぶに相応しい。ササやハイマツに覆われた稜線に白銀の草原も見える。尾根の北側は、昭和湖、龍泉ヶ原、泥炭地、須川湖の展望が良い。南側は、お室のカール、大地森、虚空蔵山、花山峠までが良く見える。青々とした笹原と、草紅葉の草原が対照的な見え、3ヶ所のピークは岩場となっている。
平日にしては、多くの登山者が天馬尾根コースを往来していて、久々の晴天を待っていたのは私だけではなかったようである。栗駒山山頂から秣岳山頂までは、約5.4㎞の距離がある。しかし、3ヶ所のピークには名称がなく、1/25,000の地図には標高のみが記されているたけである。栗駒山の手前から、1,156m、1,329m、1,393mとあって、ピークの特徴から亀岩山、乳頭岳、熊笹山と勝手に名付けて楽しんだ。
天馬尾根コースを歩いて気づいたのは、龍泉ヶ原の湿原を経由する登山道があっても良いと思った。自然破壊を助長することは否めないが、秋田県側にも魅力的なコースは欲しい。須川コースが閉鎖されている現状を踏まえると、新道の開発は魅力的である。 栗駒山から約2時間、アップダウンを繰り返し、やっと秣岳の山頂に到着した。狭い山頂にほぼ同時刻、私を含め4組6人の登山者が居合わせた。眼下に映る須川湖のコバルトブルー、周辺のオレンジ色の樹林帯、その絶景を眺め、リックに残して置いた握り飯を立ったまま食べた。同年代の単独登山者の男性が下山し、その後から私も下山を開始した。
昨年の秋にも登っているが、あまり記憶に残っていない。土曜日なのに単独の若い登山者と山頂で遭ったたげで、今年の登山とは大違いである。登山道の殆どが樹林帯で、長い岩盤のトラバースが危険に覚えたことを思い出す。下山に要した時間は45分、ほぼ昨年と同じであるが、先行していた登山者に追い着くことはなかった。
縦走登山の難点は、シャトルバスの運行がないと、駐車場まで歩いて戻らないといけないことである。秣岳の登山口からは須川湖までは3.5㎞、須川湖から駐車場までは更に2㎞となっている。この県道は以前、有料道路であったが、その前は林道であった。須川高原に至るには、小安温泉の大湯から林道を往来する必要性があった。中学3年生の夏休み、同年生3人で訪ねた日のことが去来した。あれから55年、同年生2人はこの世にはなく、私は古希を迎えようとしている。そんな思い出を振り返り、駐車場に戻った。 下山後の楽しみは、須川高原温泉での温泉入浴である。秋田県側の栗駒山荘がリューアルしてからは専ら入浴している。いつもながら混雑していて、露天風呂からの絶景が素晴らしい。登山中に見えなかった鳥海山がはっきりと見え、思わず手を合わせた。横手盆地から見る鳥海山は稲倉岳も一緒に見えるが、露天風呂からの鳥海山は別物に見えた。
「富士らしい 鳥海山を 栗駒で 眺めてみたり 秋の盛りに」
天馬尾根コースからの龍泉ヶ原
須川高原から見る鳥海山