風物詩の短句

風物詩の短句 471句

名月や 雲間に隠れ 色直し(以降二・三十代作)

名月や 命をめぐる 灯し火に

名月や 今年も一人 手を合わす

名月や ものみな照らす 美しさ

名月に 後ろ歩きし 転びたり

風鈴の 音色涼しき うとうとす

風鈴の 響き涼しき 昼寝かな

風鈴の 音色うるさき 秋の風

風流を 灯し蛍は 里山に

風香る 五月の空に 雲雀鳴く

花は華 昔は小町 いま小百合

花を待つ 心楽しき 弥生月

花の名や 哀れを誘う 女郎花(おみなえし)

花よりも 高貴な香り 梅(むすめ)

花と鳥 意気投合す 月明かり

春近し 庭木の雪が 消え始め

春近し 花の香りは 沈丁花

春来たと 思う束の間 名残り雪

春来たり 花咲き乱れ ツバメ飛ぶ

(ごま)に 張子の虎も 舌を巻く

雪分けて 咲き出で誇る フキノトウ

雪消えて 春を告げるや フキノトウ

雪融けや 天と地へとに 泣き別れ

雪道を おんぶにだっこ 戯れて

初鰹 名ばかりとなり 蚊帳の外

初詣で 年に一度の 神頼み

初物の ハタハタ食えば 冬となる

夏の夜や 激雨のあとの 月明かり

夏ならば 鯉より口に キスの味

夏風や 障子に揺れる 草の影

山里は 昔ながらの ワラビ採り

山々を 洗い清める 時雨かな

山登り 足止めさせる 時雨かな

わが(いえ)の 前の水路に 蛍来る

わが()にも 来て欲しきかな (ほとと)(ぎす)

わが夢を 紙風船に 託すなり

秋淋し 父の小言も 雲の上

秋雨や 夏の暑さは 何処へやら

秋の空 一羽のトビが 独占す

姥桜 女を捨てじ 厚化粧

姥桜 隠し切れない 垂れた乳

ひまわりや 暑さを好む 変り種

ひまわりや 花火に似たり 大輪で

涼しさや 風鈴に聞く 南部鉄

涼しさや 鈴虫鳴いて 過ぎる夏

木枯らしや 吹くも気ままに わが家に

木枯らしや 隣り近所は 雪囲い

五月雨や 晴れ待つ鳥は カワラヒラ

五月雨の 音のすき間に 鹿脅(ししおど)

鮎釣りや 高貴な趣味に 憧れず

鮎釣りで 河童に足を 引っ張られ

梅雨空に たった一度の 月夜道

梅雨の朝 心も洗う 坐禅かな

生と死を 虚ろにさせる フグの味

生と死が 隣り合わせの フグの肝

雨上がり 雲雀一家の 大合唱

雨降りは 明治の傘が 欲しくなり

日の本は 老いも若きも 初詣

日は暮れて 空は賑やか 人静か

陽の当たる 梢に高き 蝉の声

陽の光り 樹木微笑み 鳥唄う

家を出て 聞く虫の音や 過ぎる夏

家々の 灯りは長し 大晦日

子育てを 終えて旅行く ツバメかな

子が泣けば 我れも泣きたし 暑き夜

我を捨てて 見れば美し 初日の出

寝過ごして 悔しがるかな 御来光

元旦に 珍客もあり キセキレイ

カマボコや おせち料理の 主役なり

飽食の 犬の散歩や 年始め

ホラ吹きや 秋田沼館 日本一

寒スズメ 油断してたら 焼き鳥に

寅さんや 国を上げての 大笑い

満月や 輝き過ぎる 冬の空

転ばない 達磨も転ぶ 雪ダルマ

古池や 氷が融けて 鯉は跳ね

めぐる春 日毎縮まる 軒の雪

如月の 雪に飛び込む 旅ガラス

街に棲む カラスは利口 人騙す

冬や去り どこの庭にも 春めぐる

沈丁花 花は見えぬど 立ち止まる

落陽や 椿もの言い 月満る

いざ行くと 思えば辛し 渡り鳥

羨まし パスポートなき 渡り鳥

比較する 物美しき 春の花

川反や (はん)より端が 蕗の畦

残雪の 間に咲きし フキノトウ

田舎にて 春を思うや フキノトウ

蒲団干す 回りは梅の 花盛り

肥溜に 落ちてもみたり 春の月

目に青葉 幾年月が 過ぎたやら

母の日や カーネーションは 遠くなり

会う人も なく待ちわびる さくら草

スズランの 香り嗅がんと 地に伏せる

月はなく 期待は薄れ 望む春

荒地にも タンポポ咲いて 華やかに

父去りて モクレン伸びる 三回忌

モクレンの 花揺らぐかな 青い空

(くう)一つ 心に刻む 花まつり

へつらいて 見た心地せぬ 花見かな

ウグイスの さえずる声も 花見かな

新しき 庭に来て見よ ホトトギス

小さくも 声高らかな ミソサザイ

崖に咲く 花や逞し すみれ草

窮屈を 通り過ぎれや 鯉のぼり

鶴もまた 飛んで恋する 五月晴れ

うとうとと しつつも夢は 五月晴れ

スズメの子 日毎に伸びる 声の音

白魚に 胃を清めさす おどり食い

美人見て 元気出て来る コンテスト

コデマリの 花も重たき 朝の露

見栄を張る これぞ秋田の 田植え歌

間を置いて 咲く花白し 山の百合

のほほんと 田んぼに宿る 蛙かな

聞き流す 蛙の声も 異味があり

人知れず 花の野草の 命かな

いざ行かん 百花繚乱 春の野へ

野の花や 知る人は知る 好奇心

この出会い 待っていたのか 浜千鳥

若葉ふく 芭蕉のしずく また哀れ

二番ヒナ 巣立つ頃には 梅雨となり

吹く風は 思いも寄らぬ つむじ風

ひとパック 食べてもみたり さくらんぼ

太ももに 近付く季節 潮干狩り

ミドリガメ 可愛さ過ぎて 捨てられる

平凡に ポツンと穴開く 蝉しぐれ

アブラゼミ 死ぬ間際まで 飛びにけり

蝉の声 殆ど聴かぬ 年もあり

死ぬことが 必然の事 蝉の声

明日は死す 命尊し 蝉の声

不憫なる 人思い出す 終戦日

スカートの 長し短し 夏の街

星空に 蛍も競う 夕涼み

嫌な蛾も ただ夏の夜の 命かな

七夕や 織姫来たり 夢の中

灼熱も つがいの鳩は 楽しそう

いい女 眺めるだけの 夏の海

ネクタイの 結び目哀し 夏の風

団体が 圧力となる 夏の山

消えやせぬ 激しく燃えた 残り火は

父さんが ハッスルしている バーベキュー

オオナマズ 池から消えて 門前に

蚊を打たば そこに真っ赤な わが血あり

ふるさとに タイムスリップ 盆休み

児童なの 登校始まり 初秋知る

胸躍る 六畳一間に 流れ星

外出れば 妙に涼しき 虫の声

鈴虫や 涼しさ告げる わが家にも

寄り添える 夫婦の絆 キノコ採り

きり雲や 秋の名月 薄化粧

夕焼けに 飛び行く鳥 何処へやら

腰低く 高く飛び立つ イナゴかな

叩くにも 惜しまれる秋 迷い蠅

連れ合いて 命流れる 赤とんぼ

赤とんぼ 仲睦ましく 池の上

彼岸花 いつまで一輪 咲き誇る

天高く 人それぞれに 過ぎる秋

蕉翁に わが身重ねん 秋の暮れ

可憐なる 花みな枯れる 秋の風

スカートを めくっておくれ 秋の風

タクシー代 惜しんでみたり 月夜道

貧しさを 楽しさとする 月見かな

本を読み パン食べながら 秋の空

広い田に 農夫一人と コンバイン

羨まし 世界半周 鮭の旅

侘しさも 風雅なりけり 枯れススキ

ススキ野や 雪降る前の 霜化粧

悠々と 川を渡るや 鴨の群れ

行く秋や 白鳥来たり 楽しみも

雁の群れ 苦労は鷹の 二割引き

いじらしき 夫に変り 冬囲い

曇りたる 眼鏡の中に 冬を知る

蓑虫や 行くあてもなし 冬籠り

吐く息も 白く切ない 師走かな

訪ね来る 人なきままに 年は暮れ

一年を 区切り響くや 除夜の鐘

ハタハタや 昔恨めし 箱で買い

花咲きて わが恋咲けと ホトトギス(以降四・五十代作)

花咲いて やっと見つける 萩の花

花咲かぬ 瓦礫の山に 青い空

花は咲く 人の心を 知りもせず

花と月 (てん)(びん)(じょう)は 価値同じ

花も枯れ わが夢尽きて 冬籠り

花の香に 吸い込まれ行く 沈丁花

春盛り 木漏れ陽嬉し 散歩かな

春盛り ウグイスの声 明快に

春風に 花も負けるや 堆肥撒き

春風や 不気味な音を 竹藪に

春を知る 花の香りや 沈丁花

春の風 体で知るや スギ花粉

春秋(しゅんじゅう)の 運動会よ 永久にあれ

風流の 終わりや山の 木挽(こび)き歌

風流の 終わりや古都の クリスマス

風流に 艶やか過ぎる 野点かな

風流や 暑さに(しお)れ 胸の中

秋空の ビルの谷間に 見ゆる月

秋雨に 七日十日と 気は沈む

秋深し 頭上を急ぐ 雲ひとつ

秋なれば いもの子汁が 家の味

元旦や 日本人なら 初日の出

元旦や ひもじき中の 清貧と

元旦や 去年のしめ縄 また飾す

名月や 今宵は誰を 友とする

名月や 夏の暑さを 忘れさす

名月や 我れを忘れて 思い寄す

夏らしき 夏は遠のく 夏の雲

夏らしき 夕立見るは 久しぶり

夏はなく 梅雨が過ぎたら 秋風に

暑き日や 夜の(とばり)に 崩れ行く

暑き日や タモリの弔辞 胸を打つ

暑き日は ネクタイはずし クールビズ

雨蛙 騒ぐな今夜 眠らせて

雨かなと 思えば霰 屋根を打つ

雨の日も ムクドリは飛ぶ めげもせず

行く春や 思う心は 様々に

行く夏や 腰に線香 山登り

行く雁や 命惜しまぬ 旅立ちに

新年を 行き交う車 走馬灯

新年や 今年も同じ 志

新緑の ブナも旅する 落葉へ

初雪や 山用品は 積んだまま

初夢や 未だ見ぬ里の 夕月夜

初詣 奮発しても 五百円

山々を 洗い清める 時雨かな

山娘 藪に隠れて 花を摘む

山のよう 木立の後ろ 冬の雲

雪降らず 昭和と違う 平成に

雪玉を 握れぬほどの 寒さかな

雪を見て 逃げ出して行く フィリピ―ナ

テレビ観て 涙止まらぬ 大地震

テレビ観る 姿淋しき 夕月夜

テレビより 現状観よう 鵜飼舟

扇風機 有るだけましな 熱帯夜

扇風機 買えぬ夏あり 異常なり

初雪や 嬉しさ半分 不惑かな

初雪や これとぞばかり 降りにけり

七夕や 仙台平塚 一宮

七夕や 似た者同士 四十五に

ウグイスに 心乱れる 坐禅かな

ウグイスや 姿を隠し 鳴き止まぬ

淋しさの 奥に入り込む 月明かり

淋しさや 草みな枯れる 秋の暮れ

釣り人の 食べざる鮎は 哀れかな

釣り上手 甥子に頼る イワナ焼き

天高く 雲雀さえずる 桃の里

天井の 竹見て思う かぐや姫

日本一 花は吉野で 人上野

日が暮れて 寂しさだけの 秋の空

寒い朝 サザンカの花 刺激的

寒空に 美徳の衣服 纏う人

一円に 賽銭箱は 苦笑い

門松を 立てる旧家の 誇らしさ

飾るにも 飾る物なし お正月

大寒や 雪国秋田に 雨が降る

目覚めては また眠り付く 冬の朝

凍らした ジョッキの様な 寒さかな

散歩する 犬も震える 寒さなり

音もなく 降る雪もまた 震災で

転がして 春には消える 雪だるま

股引(ももひき)に また履き替える 名残り雪

二万人 覚悟なきまま 露と消ゆ

冬過ぎて 苦労や実れ 春の空

ふるさとは ガラクタの山 村おこし

思い入れ 家中風月 永久の愛

鼻を突く 春の知らせや 沈丁花

白鳥の 連帯飛行 春霞

嵐吹き 春から冬に 逆戻り

指をさす 唯我独尊 花まつり

(じょう)(ちゅう)() 桜にボケに 菜の花と

頭上では 雲雀と雁の 入れ替わり

流氷と 見まがうほどの 春の雲

母の味 忘れらない ミズたたき

半ドン後 時を惜しみて 花めぐり

嘘つくも 程々にせよ ホトトギス

おいでよと 空高らかに 啼く雲雀

さりげなく 挨拶交わす 揚げ雲雀

揚げ雲雀 日毎に高し 空の上

天高く 雲雀囀り 空清し

巣立ちする 雛ぎこちなく 青い空

思いきり 自己主張する ミソサザイ

雛去りて 親や安心 スズメの巣

荒れ野では 雑草同士 せめぎ合い

おらが春 やがて雨降る 陽射しかな

モクレンが ぱたぱたと散る 軒端かな

富山湾 ふと思い出す ホタルイカ

愛してる 九官鳥(きゅうかんちょう)は 先ず覚え

五月雨や 自然に帰る 涙かな

楽しくも また哀れなる 競馬かな

金沢の ガス海老の味 忘れ得ぬ

草を刈る 親父は逝きて 庭は荒れ

卯の花を 飾して遠き 乙女かな

こんもりと ツツジも咲かん 石地蔵

全国に 親馬鹿泳ぐ 鯉のぼり

移り行く ものの哀れや 花も過ぎ

五月から ババヘラ登場 秋田路は

幼稚園 運動会に 見る平和

水中の 潜り名人 カイツブリ

裏表 あるが悲しき ゆりの花

我を張れば (ふところ)淋し 梅雨の傘

ホラ吹きの 子もホラ吹き 山法師

脱皮する 蝶の姿は ドラマ的

さえずりも 腹の鳴る()も 朝の声

初夏の風 月光尽きぬ 部屋の窓

採収の 喜びひとしお 潮干狩り

あら不思議 今日も生きてる ヒグラシが

たまに来る 客は気まぐれ 夏ツバメ

この子らを すくすく伸ばせ 夏の雲

昼下がり 人様々な 夏の色

夏マラソン 抜きつ抜かれつ 共倒れ

自販機や ホッとも飲みたい 寒き夏

汗拭い 水をまた飲む 夏登山

コマクサの 可憐な花は 逞しく

雲海に 浮かぶ山小屋 別世界

にわか雨 喧嘩止んだり 傘の中

四・五階は まだ序の口と ()()は来る

味をしめ また刺しに来る やぶ蚊かな

蝉の声 しみじみ聞くと ラブコール

やがて死ぬ 事実に疎し 蝉の声

街路樹に 切なく聞こゆ 蝉の声

迷っても 誰も助けぬ 秋の蝉

夕沈む 花ひと時の 艶やかさ

子供とは 花火一番 楽しみで

気持ち良さ 汗を流して 昼寝かな

寝苦しい 夜ばかりなり 今期夏

交われば 我ばかりが飛ぶ 夏の夜

明け方の 眠り千金 熱帯夜

肉弾に 目が飛ばされる 夏の海

生娘や 尻をふりふり 夏を行く

岩ガキや 涼しげなるや 殻の中

稲光り 露天に時計 置き忘れ

河川敷 心一つの 芋煮会

かき氷 いつ食べたやら 秋来たり

朝夕は 秋らしくなる 盆を過ぎ

気取らずに 我れに寄り添う 月の神

涼しさや 盆を過ぎれば 秋の風

寝に帰る 家路を照らす 秋の月

柿をもぐ 童いずこか 山の里

渋柿や カラスも喰わず あるがまま

松茸や いつ食べたやら 夢も見ず

蕗の葉を 傘にもしたり にわか雨

降る雨や 月は離れて 憂鬱に

登山路で ふと口にする 山ブドウ

朝霧も 吸い込まれ行く 秋の空

欲出せば ロクなことなし キノコ採り

暮れる秋 人(くれない)の 艶やかさ

荒れ寺の 茅に一羽の カラス鳴く

栗拾う 子供いずこ 裏の山

紅葉狩り 何か変だね 観るだけで

悠々と トビは大きく 空散歩

目覚めれば 夢は破れて 枯れ薄

髪の毛が 抜け行く時に 落葉見る

鈴虫の 声密やかに 聞く哀れ

笹藪や 音そのままの 秋の風

蕭々と 日はつれないな 秋は暮れ

野良猫や 人里離れ 逞しく

撥ねられた 熊が哀れな 秋月夜

煤払う 人は見かけぬ 平成に

寝過ごして 急ぐ路上に 霰降る

木枯らしや 世の出来事は 夢模様

雲間より 月も顔出す 冬花火

しぶとくも まだ生きている 冬に蚊が

しがらみに 身を縮めたり 雪囲い

何と言う 記念日なのか 暑き冬

限りある 命一発 冬花火

窓辺には 心配顔の 雪が降る

痩せ我慢 辛抱根付く 長い冬

軽率な 言葉遮る 雪や降る

命日や 釣り人知らぬ 冬の海

淡雪や 師走六日に 満る月

文人の 茅の家にも 雪あられ

降る雪も 津軽南部と 別れ行く

良く晴れて 春かと思う 師走かな

若い人 高級ホテルで クリスマス

心意気 褒めてやりたい 寒椿

山間(やまあい)の 寒村灯す 雪明かり

懐が 淋しくなるや 雪の夜

正座して 眺める冬の 星座かな

元気こそ 宝と思う 年の暮れ

年の瀬や 何の因果か 友は死す

絶不調 今年の暮れは 蕎麦もなく

叩いても 売れぬバナナの 哀れかな

大晦日 昨夜と同じ 牡蠣の鍋

孤独にも 慣れて聴き入る 除夜の鐘

寝る勇気 起きる勇気や 年替り

雨の夕 コウモリ飛ばず 歯磨きす(以降六・七十代作)

雨の音 聞いてコウモリ 近寄らず

雨上がり 傘また忘れ 蛙見る

雨音に 蛙の声が 混ざりけり

風流に 身を置け飛べぬ 旅烏

風流に 羽根休ませる 渡り鳥

風流や コロナで消える 秋まつり

風物詩 清水に浮かぶ 西瓜かな

雪捨てや 隣家と今年 顔合わす

雪運ぶ ダンプ渋滞 大通り

雪灯り 真に明るい 時もあり

初雪や 悪夢のごとく 降り続け

初雪や 醜い景色 遠ざける

我れを知る 人みな絶えて 軒の梅

我れもまた さえずってみる ウグイスに

我を通す ひとひらの花 川石に

一月の 雨珍しき 豪雪地

一つ消す 友の名前や 年賀状

一念が 岩を通す 春の水

名月や 人類滅び 誰愛でる

名月や 人の群がる 所にも

行く年や ナマバゲ行事 縮小す

行く春や 昭和は遠き 夢の中

秋風に 儚さ嘆く 蝉の声

秋まつり コロナが過ぎて 笛太鼓

目を凝らし 飛ぶ鳥を追う 春の海

目が覚めて 今日も生きいる 蝉の声

年賀状 書く枚数も 減りにけり

元日が 赤く消えゆく 能登地震

大地震 海の怒りに 空の晴れて

ラジオ聞き 堪える涙 雪が降る

お正月 何が目出度い 日々老いて

八時間 寝てもみたいな 年始め

大寒に 雨音聞くや 豪雪地

まんさくの 花は気づかず ふるさとに

歳重ね バレンタインデー 無縁なり

(さか)匂い 遺して春は 散華かな

アカシアの 花の匂いは 青臭く

生き残り 藤の花見る 谷間かな

下らない へへへの野の字 花を踏む

花見えず 水路に花びら 流れゆく

夢は消え 家のモクレン 散らぬなり

十善や 欲望のまま 野にスミレ

死に場所は あちらこちらの 花だより

惜しまれて 散る花あれば また逆も

枝切られ 松脂落ちる 木の(なみだ)

咲く花や 今日ある命 明日はなき

雑草も 生きんとすれど 刈り取られ

春遠く 病友ばかり 増えにけり

音もなく 飛び交うコウモリ 今年また

コウモリと 出会い嬉しき 家の空

日食や 梅雨の雲間に 夢と消ゆ

寝不足も 朝顔見るため 早起きす

暗闇を 自ら灯す ホタルかな

久々に ホタル見るなり わがボロ屋

蝉の声 聴いては梅雨が 明けにけり

暑ければ 一段と髙し 蝉の声

鳴く蝉も 勝手に死ねぬ 命かな

亡き人の 悲哀重なる 蝉の声

この暑さ 蚊も飛ばぬなり 我家かな

最近は 泳ぐことなし 夏の海

行きそびれ 音だけ響く 花火かな

ハイマツと 共に生きるや ホシガラス

何を見て 死んで行くのか 時鳥(ほととぎす)

こんな子を 手塩にしたと 雉は鳴く

台風は 何処へ行くのか 知らんふり

コウロギの 鳴き音が消ゆる 立ち小便

暫くは 金木犀に 夢心地

鉄と塩 鹿もなめるか 岩レールと

仮装して 歩く祭りも 流行りかな

絵に描いた 小春日和や 他所の庭

道楽は 早寝早起き キノコ採り

蚊と共に 秋の夜長を 生きにけり

去年より 良いと思うや 実る秋

カラスより 熊に喰われる 庭の柿

天高く 馬肥ゆるより 女房肥え

車より 速く飛び去る 二羽のサギ

テレビでは 冬のコマーシャル 溜め息す

初雪や 余命を探る 山路かな

可愛らし 足跡もあり 雪の上

降る雪や どこもかしこも すきま風

すきま風 入りて我が家 換気され

暖かさ ストーブ一つの クリスマス

寒スズメ 存在感を 発揮せよ

インドガン ヒマラヤ山を 越えるとか

ハタハタや 今年の歳暮 無理となり

薬飲み また酒を飲む 年の暮れ